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公益社団法人日本山岳会

健康長寿のための山登り2:心拍数による運動強度の調節 斉藤 繁 

健康長寿のための山登り2:心拍数による運動強度の調節

齋藤 繁

 「山登り」を習慣的な運動とすることで、健康長寿を満喫できるのではというお話を前回致しました。では、実際に運動するときの運動負荷量は何を指標にしてどの程度とするのが適切なのでしょうか。特別な道具や技術がなくても測定できる指標として、心拍数が広く使われています。心拍数と主観的なつらさとのおおよその関係が示されていて、持久系のトレーニングとして適当な運動強度は、「ややきつい」程度とされています。これを心拍数に換算すると、各人の最大心拍数の60%を超えるぐらいという目安になります。このレベル以上の運動では、筋肉への酸素供給が不足状態となり、筋肉での乳酸産生が高まってしまいます。乳酸産生が高まる運動強度の変換点はAT (anaerobic threshold)と呼ばれ、この点での心拍数は「{(220‐年齢)-安静時心拍数}×50%+安静時心拍数」という式で予測されます。健康増進を目的とする登山、競技選手でない登山者がトレーニングとして取り組む「山登り」では、筋肉を極端な酸素不足にしない程度を目標にするとよいでしょう。ただし、各個人の心拍数の最大値は下の式で予測されるので、年齢が上昇すると最大心拍数も下がってくることに注意が必要です。また、年齢を重ねるうちに暦上の年齢と身体的年齢の差が大きくなっている可能性があります。健康管理が上手で、肉体的な年齢が暦の年齢よりも若く維持できている人では、この式で引くべき数値が小さくなり、最大心拍数の低下が遅れますが、逆に不摂生を続けたことで身体的な衰えが進んでいる人では暦年齢よりも引く数が大きくなり最大心拍数が小さくなります。

     最大心拍数簡易予測式 「最大心拍数 = 220 – 年齢 」

  どこまで心拍数が上げられるか限界まで運動負荷を上げて、実際の個人の最大心拍数を測定すれば、上記式の「最大心拍数」にその数字を代入することで、その人の身体的年齢が逆算できます。健康診断で運動制限を指示されていない方は、倒れても救護が得られる安全な環境で一度試してみてもよいでしょう。

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        写真:心拍数は運動負荷を測定出来る指標として広く使われる

<参考図書>

1)齋藤 繁 著 「病気に負けない健康登山:ドクターが勧める賢い登山術」(ヤマケイ山学選書)山と渓谷社 2010

2)齋藤 繁 著 「体の力」が登山を変える ここまで伸ばせる健康能力YS006 (ヤマケイ新書) 山と渓谷社 2014

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