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公益社団法人日本山岳会

登山と睡眠薬 832号

登山と睡眠薬

村上和子

「夕食後の午後6時に寝て4時間後の0時に起床、そして頂上アタックへ出発!!」という登山の場面には、いかにここで睡眠を上手にとるかが成功へのカギの1つになるのではないだろうか。

体力が十分残っていれば気にすることもないかもしれない、しかし高所という条件は甘くはない。

長期登山においても眠ることができないという場面が続くと、眠れないという恐怖心や不安、ストレスが生じ、思うように自分の力を発揮することができないかもしれない。それではと前もって病院に行って医師に睡眠薬を処方してもらってから、山行に出発すれば良いのでは…と考えるがここで大きな問題が生じる。

睡眠薬は超短時間型、短時間型、中間型、長時間型に分類される。前述した登山の場面では4時間で目を覚ましたいのだから、超短時間を飲めば良いと思ってしまいがちであるが、そんなに単純な問題ではない。睡眠薬の副作用には呼吸抑制・筋弛緩作用があるのだ。高所ではこの呼吸抑制が大きな問題である。それに超短時間型には中途覚醒時の健忘症という困った副作用もあるのだ。これは途中で起こされた場合、その起きていた時の行動を全く覚えていないという副作用である。

それでは、登山に安心して服用できる睡眠薬はあるのだろうか。それは、睡眠薬そのものではなく抗アレルギー剤の服用が良いと筆者は考える。近年開発された眠気の少ない抗アレルギー剤ではなく、眠気の副作用が強い昔の抗アレルギー剤の利用である。つまり強い眠気という副作用を利用した飲み方だ。実際、町の薬局・ドラッグストアーで医師の指示がなくても購入できる薬では、抗アレルギー剤である抗ヒスタミン剤が催眠鎮静薬として販売されている。ただ個人の薬の感受性は微妙に異なるので必ず試してから利用したい。

最後に筆者が高所登山に何を使用したかを参考に記しておきたいと思う。もちろん眠気の副作用が強い抗アレルギー剤を選んだが、鼻炎用の点鼻薬を利用した。これは鼻腔粘膜より直接吸収させるので即効性があり、かつ外用薬なので全身性副作用が少ないので選んだのだ。眠るのに時間がかかった、眠れたが起きたら全身がだるいでは、台無しである。筆者は薬の感受性が強いので外用薬が利用できたという体験談である。

最後に抗アレルギー剤はすべての人に使えるものではなく、使ってはいけない場合もあるので薬の選択は必ず医師に相談していただきたいと思う。

 

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