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公益社団法人日本山岳会

登山と温泉のすすめ 837号

登山と温泉のすすめ

村上和子

山があるところには大抵温泉があります。

日帰りでも、長期縦走などのハードな登山の後でも、最後に温泉に入るのは格別、至福の時間ではないでしょうか?

特に冬山登山を終え、雪の降る中の露天風呂に浸かるというのは想像しただけでも本当に格別な幸せを感じることでしょう。

下山直後では、筋肉の疲れや長時間緊張の精神的疲労、その他汚れなどの物理的ストレスが温泉で一気に解消されます。もちろん、温泉ではなく普通の銭湯でも効果はありますが、やはり山には温泉がつきもの、その山独自の温泉につかりたいものです。

温泉には、単純温泉、塩類泉、特殊成分を含む療養泉と大きく三つに分けることができます。そして、物理効果には温熱効果、天然マッサージの水圧効果、体が軽くなる浮力効果があげられます。薬理効果は、温泉成分、泉質で違いがあり様々です。温泉には必ず温泉分析表が貼ってあります。温泉分析表と聞くと難しく思えますが、これは温泉のプロフィールですから、読むことをお勧めします。

温泉の効果は、熱い温泉では自律神経の「交感神経」を優位にするので、体を休めるには不向きです。筋肉の疲れや緊張をほぐすには、ぬるめ泉温40℃前後が末梢血管を拡げ温熱効果を発揮します。この温度が筋肉疲労や心身ともに安らぎを与えます。

日本人が最も気持ちが良いと感じる泉温は42℃と言われていますが、37℃~40℃位の温いお風呂は体の内外から温める温熱効果ですが、42℃以上のお風呂は肉を温めるという外側からの効果になります。

次に温泉特有の泉質のポイントをあげておきます。単純温泉…リラックス、炭酸水素塩泉…肌の汚れや古い角質を落とす、硫化塩泉…肌をしっとりさせる・乾燥を防ぐ、硫黄泉…血行促進、酸性泉…殺菌・活性 などで、山でのちょっとした怪我などの殺菌効果は弱酸性~酸性泉が適しています。

また温泉では上記の作用だけでなく、ヒートショックプロテインを増加させるという効果もあるようです。ヒートショックプロテインとは熱ストレスによって増産されるたんぱく質で、傷んだ細胞を修復する働きを持ち、免疫細胞の働きを強化、肉体疲労の軽減、生体機能をアップなど様々な効果が文献に並んでいます。これは山行の疲労的精神的回復だけではなく、疾病の元を断ち切る可能性があるということです。また,近年ガンの温熱療法でも注目されています.このヒートショックプロテインを増やす入浴法は、さら湯では40℃20分、41℃15分、42℃10分の入浴時間なのですが、温泉では、40℃15分、41℃10分、42℃5分と入浴時間を短縮できます。なので、1クール、2クール、3クールと簡単に分割湯ができるのです。老後に温泉めぐりを楽しむということが長寿の秘訣と言われていますが、このことを考えると理解できると思います。

登山と温泉のすすめ。これは山行時のその場だけの効果だけではなく、根本的な自分の体の細胞も修復もできる一石二鳥ならず一石三鳥かもしれません。

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