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公益社団法人日本山岳会

6月「佐渡の自然を描く」山行報告

 「佐渡の自然を描く」山行報告

幹事 渡邉嘉也

     日 時:2014年 6月6日(金)〜8日(日)

        参加者: 15名            

  予報より早く来た梅雨は、九州地方に豪雨をもたらし、関東甲信地方にも大雨を見舞った。しかし、佐渡は、私達を多少の風と夜の雨で歓迎してくれた。 「米山さんから雲が出た〜」の歌い出しの米山を対岸に見る岩首小学校の校長を務めた渡辺欣二さんが「この目で確かめたのは3年間で一度、月山から白馬岳までだった」と佐渡三十六景で書いておられますが、私たちは鳥海山から立山までの眺望ができた。

伝統的な農業に育まれた文化風習は生物多様性の保全を目的に“朱鷺と共生する佐渡の里山”として2011年に世界農業遺産に認定された。   

流人の影響で形成された公家文化である古寺、遺産となった鉱山都市であった武家文化、千石船の基地として繁栄した町人文化、そしてユキザサが咲く“天然杉の島、舟木の島”で「佐渡の自然を描く」こ とが出来ました。 雨を覚悟して出立したスケッチ山行でしたが、画帳を濡らすことなく描けた運の良 い2泊3日の短い旅であった。この度の企画及び実行に際し、本間様、渡辺(欣)様より多くのご助言を戴きました。心より感謝申し上げます。 

     *佐渡山行の写真は、本間さんの下記フリッカーにあります。ご覧ください。     https://www.flickr.com/photos/119080293@N07/


(第一日目)                                 田中清介

6月6日(金)大宮駅ホーム、成り行きに任せて適当に自由席を確保。走り出したMAXとき307号車の車窓から眺める田園風景は、ゆったりとした朝のコーヒー一杯とともに、これからのスケッチの旅心をくすぐる。

初めて乗船する佐渡汽船ジェットフォイルのデーターを調べると船の長さ27.6m、速度47ノット(時速約87km)、乗客250人、両津港までの所要時間1時間05分とのこと。出航は11時30分だ。

小学生の遠足よろしく船内では最前列の座席を我々で独占してしまった。高速運行で危険な為、乗客の外デッキは立ち入り禁止である。幹事の渡邉さんが船窓より見える越後の山々を説明してくれた。弥彦山、角田山、朝日岳、飯豊山、守門岳、浅草岳、海には粟島。

佐渡ヶ島が近づくにつれ金北山(1172m)の山影がはっきりしてきた。大雨予報にも拘らず、なぜかここ佐渡近辺は薄日さす好天に恵まれている。行いが良かったのかな? 早速、船窓からスケッチを始めるひとがいた。

昼食は両津港のレストラン「海鮮横丁」だ。佐渡にお住まいの池野さん(渡邉さんの弟さん)が出迎え、座席をキープし、料理も準備していてくれた。料理は注文に応じて出してくれるのだが、マグロが美味しいとのことでほぼ全員が「マグロ ナガモ丼」(海鮮丼)をオーダー、刺身とお漬物、カニ入りの味噌汁お替わり自由に舌鼓を打った。 

1時半、本間さん、渡邉さんの運転する2台のレンタカーに分乗し、長谷寺(ちょうこくじ)向かう。真言宗のお寺でぼたんの花で有名であるが、そのぼたんは終わり、今はピンク色の芍薬の花が咲いていた。奈良の長谷寺(はせでら)を模して平安期に建てられた古刹。斜面に沿って階段状の屋根付き回廊が作られていた。ここでスケッチ一枚。

待望の赤泊にある「北雪酒造」(酒蔵)に立ち寄る。佐渡の伝統と熟練の酒造り行程を見学。最近は超音波熟成やクラシック音楽熟成などにも挑戦しているとのこと。テレビでも紹介された「北雪YK35」(超高級酒)の試飲も楽しんだ。日本酒ソムリエの長澤さんによれば、一般的な特別本醸造「北雪」も味わい深いとのことであった。おみやげに一本。

宿根木の集落、街並みは、千石船(北前船)の廃材を利用した民家が多く、人影もなく静かで、ひっそりとした佇まいであった。大人の休日クラブPR誌に載った吉永小百合と「塩」の看板、三角家も見ることが出来た。

たらい船の浮かぶ宿根木の港からは日本海の向こうに遠く妙高山、米山等が望め、一枚スケッチした。これでも山好きの山の絵になるのかな?

佐渡ケ島最南端の宿根木の宿泊所「御宿花の木」は移築された古民家風の堂々たる造りで、落ち着いた雰囲気をただよわせていた。

夕食はブリ、甘海老、煮魚、カニ、鶏肉の燻製(ツバキ油)、サワラの土鍋、刺身、笹団子など多彩で極めて美味であった。酔いが回るほどに各人の短いスピーチで盛り上がり、若い頃、佐渡で3年間教職にあった渡邉欣次さんの思い出話が興を添えた。

明日はどんな出会いが待っているのだろうか、楽しみである。

 

                                            両津港 「海鮮横丁」で昼食

           

    北雪酒造 地下蔵前                     北雪 YK35

北雪酒造の美酒のみならず、幹事長の長澤さんから宿ごとに佐渡の

おいしい地酒の差し入れを頂きました。有難うございました。


(第二日目)

合流組みの思い出 原山 恵津子

 6月6日(金) 夜行バス 池袋発23:30 下落合23:40 どしゃぶりで涼しい都内を後に乗車

6月7日(土) 新潟駅前降車場に待機中のタクシー4:57 15年前に比べて町並みがきれいだ。 新潟港5:10 佐渡汽船で洗顔、朝食後カーフェリーのチケットを購入し改札にならぶ、自由席の場合は窓際の良さそうな場所から埋まってゆく。 今春から竣航した「ときわ丸」はとても綺麗だ。 両津港は晴れていて、渡辺嘉也さんの義弟という池野さんと言う方がマイカーで出迎えて下さり、懇切丁寧にガイドしてくださった。 走行中突然家並みから車が出てくるが、佐渡には多いとか。 キープ40kmをしていると、大名行列になってしまう。いたたまれず山道に入る。 千石船の里宿根木で先発隊と合流した。 小さな湾だが、先発組の皆さんは既にスケッチをしていた。 長澤さんが急ぎ漁師町の中を案内してくださった。 広くない場所なのに、観光バスやマイカーの為に駐車場を整備し地元ガイドさんも待機していた。 宿根木は小木に先駆け中世より廻船行業をなし佐渡の三分の一の富をあつめたとか。 小木が幕府により公式港になると、この地の人は全国へ乗り出した。 船大工、造船技術者が多く居住し、1ヘクタールに110棟の高密度で暮らした。2台のレンタカーに分乗し、小比叡にある小比叡山蓮華寺(真言宗)という古刹へ。別名紫陽花寺とか。 花期には早かった。 佐渡は無住寺が多く宗派が違っても3,4寺のお寺の面倒を見る住職も居られるとか。昔はさぞかしと思われる寺もかなり荒れている。 町並を走ると本間姓の商店等が多く本間さんの親戚かな。 沢根という所で昔からの名物という沢根団子を購入し頂くが一口大でつるりと喉へ。 春日﨑という海岸から金北山をスケッチするが花が咲き乱れ中々良いところだ。 カンゾウ、アサツキ、スカシユリ(日本海側は岩ゆり、太平洋側はいわとゆりという)、ミヤコグサ、ハマアザミ等。

尖閣湾海中公園に車をとめただ一軒の食堂に入り昼食。 刺身定食を食し売店を通って入場する。美しい湾の中を観光船が行く。物凄い強風の中で書くのが、一苦労で渡辺欣二さんすらよろめいたくらい。 途中佐渡金山の昔使われていた選鉱場にたちよる。一路大野亀へ海岸沿いに走る。途中の海岸には岩ゆりが咲き山側にはカンゾウが咲いている。 漁師町の風情を味わいつつ、大野亀駐車場到着。カンゾウ祭りの最中だが夕方なのでテントのみ。観光客はまだ多い。時間が足りないので山頂は割愛し遊歩道を下りお花畑に酔いしれる。キスゲに比べると花が大きく色鮮やかだ。

ピンクのアサツキも群れ咲き白エゾシオガマも咲く。売店ではコーヒーを飲みながら眺めて居る人たちもいる。「銀バイ草」というのを味見させてくれシャキシャキしておいしかったので、買った。本名ホンダワラ。自転車でツーリングの若者が多いが、知人によると一周210キロだという。二ツ亀のビューホテル前に駐車し下ると原っぱがあり、キャンプ場になっている。が、そこで、描く人もいたが、浜へ急な階段をおりてみた。ハマヒルガオ、ハマボッス、ハマエンドウ、ハマアザミが咲いていた。

海草が沢山流れついていたが、貝殻がただの一つもない。夕方なのに陽が高く大野亀の下のほうに戻り道の真中で集合写真をとる。 車は一台もこない。次に海府大橋に立ち寄る。谷底が凄い眺めだ。国民宿舎海府荘に到着したが、外観は普通の家かと思った。 中は広くて安心した。遅い到着なので、夕食は後にして、入室したら、正面に湾がみへ、岬の上に夕日が沈む所だった。海鮮尽くしの夕食は初めから食べ切れそうもないので、ご飯を割愛した。

メニュー

皮剝ぎの肝、西螺貝(新潟県の名)の煮付け、真河豚鍋、河豚白子焼き、河豚茶碗蒸し、鰤の中華蒸鍋、河豚梅肉掛け、いなだのユッケ、鰤麹焼き、しいらの飴掛け(大根と青梅苔)。

入浴後、佐渡の銘酒、ワイン等で、二次会となったが夜行バスの寝不足で、早目に失礼した。


第3日目   6月8日(日)                                                                                                                         橋本 久子

 今回は2日目からの参加で、昨日は夜行で駆けつけたせいか殆ど上の空でスケッチらしいスケッチもできずに終わってしまった。最終日なので頑張ろうと思いながら元気にスタートした。 

国民宿舎海府荘の朝食は古代米のご飯とデザートの冷凍おけさ柿が印象に残った。この冷凍おけさ柿には思い出がある。まだ中学校に勤務していたころ両津市の前浜中学校と学習交流会をやっていて給食の時、この冷凍柿をいただいたのだ。暑い日だったので格別に美味しかったのを覚えている。

8:30に宿を出発し石名の天然杉を目指す。2台に分かれたレンタカーで小一時間ほど走り天然杉の遊歩道入り口に到着。

時間は9:30~10:40まで。

70分の予定で天然杉を見学、スケッチをする。

ここの杉は大佐渡石名天然杉と呼ばれ樹齢は200~500年くらいである。雪と強風によってさまざまな形に伸びている。特に次の5本はそのユニークな姿形から象牙杉、四天王杉、大黒杉、家族杉、羽衣杉と名付けられている。なんでもこれらの名前は市民から募集して決まったということだ。全部を描いている時間はないので初めに出逢った象牙杉と四天王杉を描いた。

ここの杉は本当に迫力があって一日いても飽きないだろう。好い樹に出逢って好かった。

下山の途中で遠く立山連峰や鳥海山が見えた。

 次のスケッチポイントは両津湾から見える金北山である。

時間は11:20~11:45まで。小雨がぱらついてきて山のてっぺんも雲に覆われ

なんだかぱっとしない。渡辺欣次さんはと見ると小雨など物ともしない様子でぐいぐいとコンテを走らせている。さすがだなあと感心する。

最後のスケッチポイントは佐渡の名刹清水寺(せいすいじ)である。京都の清水寺を模して建立したといわれる寺である。正面の「救世殿」は能舞台になっており下から見上げる形は京都の「清水の舞台」と同じである。境内にはこの他白壁の土蔵や海鼠壁の蔵など美しい建立物があった。

時間は12:20~12:45まで。雨が強くなってきたので山門の下で描く。建物の中で神社仏閣ほど難しいものはないと敬遠してきたが、ここの清水寺は趣があったので見えるところだけでもと鉛筆を走らせた。もう少し時間が欲しいと思うのはいつものことだ。

また来ようかしら。

本降りになってきたので傘をさして車に戻り昼食の場所に向かった。

新穂の「長三郎寿司店」で盛大な昼食会。1:30~2:15まで。

それぞれ思い思いの飲み物で喉を潤し、幹事さんが頼んでくれた海の幸をたっぷりいただいた。私のテーブルはゆず酒を一本とり、6人で乾杯した。隣の本間さんが鰤カツを頼んだので2切れほどいただいて食べる。おまけにデザートまでいただき大満足。食べ物に恵まれた日々だった。

今回のスケッチ行程を全て終え、あとは船に乗って帰るだけである。

16:15 両津港。

船室で休む人、エントランスで談話&酒盛りをする人、また交替したりする人で船の2時間半はあっという間に過ぎた。私はずっと飲みっぱなしだった。が、絶対量は少ない。船が揺れているのか自分が酔っているのか分からなかった。心地よい揺れだった。

 18:45新潟港着。ここで新潟から参加の渡辺欣次さん、中川 久さんと別れの挨拶をして新幹線へ。

19:25新潟発。自由席は2カ所に分かれた。本間さんは予約席だった。

新幹線の中でも宴会が続いたのは言うまでもない。柴田さんにはアメ横で仕込んだという珍味やお酒など差し入れていただき更に盛り上がった。もちろん他の皆さんにもいろいろご馳走になりました。

20:54大宮着。

21:20東京着。それぞれ家路へ。お疲れ様でした。

今回のスケッチ山行は初日に用事ができて途中参加になりましたが、キャンセルしないで本当によかったと思います。東京を出るときは土砂降りだったけど佐渡ではちゃんとスケッチできる天候に恵まれました。

また車を運転して下さった渡辺さん、本間さんには本当に感謝しています。お二人ともゆかりの地で、迷うことなく目的地に案内して頂き大変お世話になりました。

幹事の皆様、楽しい企画を本当に有り難うございました。


「トビシマカンゾウ・イワユリと大佐渡山地の植物」

小出 和子

外海府海岸は岩礁性海岸に特有な浸食地形が良く見られた。特に尖閣湾の海食崖では数10m以上の高さに達する所も多く、

これが波浪により浸食されて、変化に富む海岸線がもたらされている。大野

亀の海成段丘群では、トビシマカンゾウが一面に咲き乱れていた。また、その近辺の海岸にはイワユリが多く見られたトビシマカンゾウは鳥海山に咲く

ニッコウキスゲの1種でニッコウキスゲは、1本の花茎に3~4輪の花を付けるがトビシマカンゾウは1本の花茎に10~30輪の花を付けるので花どきが長く次々と咲くのだそうだ。酒田生まれの私は、トビシマカンゾウは良く知っていたが、佐渡の方が有名になってしまったのは、この海食崖の風景がそうさせたのではないかと思う。海岸には他にハマヒルガオ・アサツキ・メノマンネングサ・マルバシャリンバイ等が見られた。北海道・沖縄の植物が入り混じっているのは、飛島同様に日本海の佐渡沖で暖流と寒流が合流するからと言われている。

大佐渡山地では、濃霧地帯の天然大杉の見学に行ったが、

入口ではタニウツギが私達を迎えてくれた。

林床にはユキザサ・スミレサイシン・エンレイソウ・ズダヤクシュオオイワカガミ・ホウチャクソウ等が見られ、実がついたものではヒメアオキ・カタクリが見られた。特にオオイワカガミは、通常のイワカガミより

背丈が高く、カタクリは葉が通常より卵型ではじめカタクリと気付かなかった。

タチツボスミレより一回り小さい菫はなんだろうと思っていたがスミレサイシンのようである。

アルパインスケッチクラブ

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