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公益社団法人日本山岳会

南アルプスの雄 花の北岳(山想倶楽部)

記 横田昭夫

(芦安バス停)

期 日 令和3年7月12日(月)~14日(水)
参加者 石原達夫、下河邊史郎、小笠原辰夫、横田昭夫
7月12日(月)晴れ一時小雨
「白根三山」の主峰、北岳は富士山に次ぐ日本第二の高峰で、北岳バットレスは南アルプスを代表する岩場であまりにも有名である。一方、気候的には太平洋側に面しているため季節風の影響が弱く、降雪量が少なく、夏季の雨量が多いので植物の生育に適しており、森林限界が2600~2700mと北アルプスより300mほど高く、山腹はシラベやコメツガなどの黒木に覆われている。森林限界が高いことによって、当然のことながら、ハイマツや高山植物が現われる高山帯が高くなり、その分樹林帯歩きが長くなる。芦安駐車場までの所要時間に不案内な私はかなりの余裕をもって自宅を出る。いつもどおり東海環状道、中央道経由で芦安駐車場にバスの予定時刻の1時間以上前の8時50分頃に着いて、バス停の横の駐車場に車を止めることができた。駐車場には車が5,6台止まっているだけでまだガラガラの状態。バスが来るまで何もすることもなく、バス停の切符売り場のおじさんと話をする。「北岳には若いころから20数回は登ってい
る」とのこと。また南アルプス林道のことを聞くと「広河原から北沢峠へは令和元年の台風19号の被災で尾根からすっぽりと崩れているため完全閉鎖中、また長野県側の戸台口からは令和2年7月の豪雨により鹿の沢~藪沢間が復旧工事中で道が通じておらず、甲斐駒・千丈に入るには大変便利が悪い」ということだ。「広河原側の完全復旧は5,6年先になる」と言われた。ともかく、そんなことを話していてもなかなか時間は進んでくれない。バス停の切符売り場のおじさんも10時のバスが来るまでは何もすることがないので暇なものだ。下山した時のことを考え芦安温泉郷でおすすめの温泉を訪ねると「湯の泉質から一番のお勧めはここへ来る途中の右側に有った『天笑閣』が良い」とのこと。

(広河原から大樺沢と緑のつり橋)

「この辺りでは天笑閣の泉質が良い」と勧められる。そうこうしているうちに10時の広河原行のバスが到着する。ここで、甲府駅から乗ってきた石原さん、下河邊さんと合流する。バスは予定通り11時に広河原に着き、先に来て見えた小笠原さんと合流し全員がそろった。今回の北岳は一般ルートから2泊3日のゆったりとした行程で北岳の花々を愛でようというものだ。広河原で登山計画書を提出し、北沢峠へのゲートをくぐり、つり橋で野呂川を渡り登山道に入る。広河原山荘の横から樹林帯に入り大樺沢分岐に出る。ここからは御池コースの急登が始まる。展望はなく、ひたすら樹林帯中の木製階段・同梯子の連続を登る。2000m付近で小太郎山・鳳凰三山の一部が少し視野に入ってくる。直登が終り、山腹をまき気味に緩やかに登っていくと台地に出て3時35分白根御池小屋に着いた。白根御池小屋は建て替えし、2006年6月にオープンした小屋だが、まだ、新しくきれいな小屋だ。部屋は個室でしかも密を避けるため、個人をパーテーションで区切りコロナ対策をしている。また、小屋の設備として太陽光発電装置並びに光発電装置を設置している。5時夕食。夕食後、明日の晴天を祈って床に就く。

(白根御池小屋)

7月13日(火)晴れ、午後と夜、強い雨降り
食事前にカメラを持って外に出たが、白根御池小屋前の広場から見る北岳は相変わらずガスの中だが、天気が良くなって今日は気持ちよく登れそうだ。しかし、御池を過ぎて登りにかかったところで、下河邊さんから「体調が悪くこれ以上登行するのが困難なので下山する」と申し出があり、容体を確認し下山してもらうこととして別れる。白根御池小屋から小太郎山分岐迄は標高差500Mの直登の草スベリといわれる所でひたすらゆっくりと登っていく。大樺沢右俣コースの分岐点(2750m)あたりが森林限界らしく、背の高い木々は姿を消し、高山の雰囲気となる。この山に入ってからよく年齢を聞かれる。山を下りてきた若者から「お幾つですか」と問われる。こちらの年を言うと聞いた人は年齢に感心し、「自分も頑張らなくちゃ」なんてことを口走りながら降りていく。余程こちらの所作が悪いのか、あるいは容貌がかなり年寄りに見えるのだろうか。この年齢の話は北岳頂上でもあったし、下山後、入った温泉でも聞かれた。主稜線を少し東面に下ったところをトレースする。幾つかのコブを越えて建物が見えだしたところを登りきると肩の小屋だった。ちょうど昼時となったので小屋内で昼食を取る。小休止後、不要な荷物を小屋に預け、空身でガスの中、北岳を往復する。ガスに包まれてまったく視界は効かず、足元の高山植物を見て歩いるだけで上部の状態は全く確認できない。ガスの覆っている状態はずっと続き頂上に到着し、記念撮影のみ済ませて小屋へ下山する。
小屋の主人がキタダケソウのある場所を案内してくれた。キタダケソウは北岳の南東斜面のわずかな面積の風衝草原にだけ生えるといわれている。小屋近くの台地からすぐの所にあり、沢山はなかったが白い清楚な特徴ある花を見ることができた。今回の山行の目的の一つであったので感動する。ちょうど咲いたところで「今年はこれで終わりだ」と言っておられた。夕食の5時まではかなりの時間があり、小笠原さんと四方山話を肴に時間をつぶす。夕食後、早々に床に就くも夜半までかなりの雨が降っていた。

北岳山頂(ガスっていた) (キタダケソウ)

7月14日(水)曇りのち一時雨
 昨夜の雨はかなり長く続いたので、2018年の白馬岳を思い出して心配していたが、すっかり雨は上がって視界が効くようになっていた。鳳凰三山の奥には奥秩父の金峰、瑞牆が姿を見せ、甲斐駒も雲の間から、また千丈はまだ雲の中(その後すっかりその姿を見せる)また、北岳の南東側には富士が靄に霞んでその姿を現す。朝食後下山にかかる。白根御池小屋までは往路をそのまま下る。白根御池の脇を通り大樺沢二岐へ。大樺沢を下る。ここを登ってくる登山者が結構ある。大樺沢下部の標高1770m付近の沢を渡ったあたりから雨が強くなり雨具の上だけ着る。この雨は長く続くことはなくすぐ止んでしまう。広河原に下山し、乗合タクシーで夜叉神へ、小笠原さんの車で芦安へ、その後芦安のバス乗り場で仕入れた情報の日帰り入浴の『天笑閣』にて汗を流しさっぱりする。【天笑閣の湯は泉温:29.4°C、pH:10.4、泉質:アルカリ性単純温泉】でツルツルの湯であった。その後、蕎麦処を探したが営業時間が過ぎており、甲府駅の駅ビル5Fにある麺処でそばを食する。食事後、散会し、中央線で帰る石原さんガソリン給油に向かう小笠原さんと別れ帰宅の途に就く。
北岳で出会った花々たち:ハクサンイチゲ、ヨツバシオガマ、ミヤマシオガマ、キタダケソウ、ハハコヨモギ。キタダケヨモギ。ミヤマハナシノブ、コケモモ、タカネグンナイフウロ、ハクサンフウロ、ミヤマキンポウゲ、シナノキンバイ、コバイケイソウ、イワカガミ、イワツメグサ、マルバダケブキ等々、

(肩の小屋付近から北岳)

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