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公益社団法人日本山岳会

ダイアモックスは利尿剤で代用できるか 716号

ダイアモックスは利尿剤で代用できるか

野口いづみ

 ダイアモックス(一般名アセタゾラミド)は弱い利尿剤でもあることから、利尿剤が高山病に効くと考えられるようになり、一部ではいまだにそのように信じられています。しかし、これは主にわが国で信じられている誤解といえます。高山病に効果があるのは、利尿作用によるものではありません。
 ダイアモックスは腎臓からアルカリ性の重炭酸塩の排泄を促進させて、体液を酸性に傾かせます。その結果、高所で過換気状態からアルカリ性に傾いていた体液を酸性側に引き戻し、換気量をおだやかに増加させることができます。また、脳脊髄液も酸性側に傾け、脳浮腫を軽減させる効果があります。このようなことから、高山病に効果があると考えられています。
 他方、利尿剤として有名なラシックス(一般名フロセミド)やフルイトラン(一般名トリクロルメチアジド)は利尿作用が強く、尿の排泄を増加させて脱水を招き、体の塩分(電解質、ナトリウムやカリウムなど)のバランスを崩して体調の悪化をもたらす場合があります。
 2004年2月に日本山岳会医療委員会で講演をされたブッダ先生(ネパール・国際山岳連盟医学委員会委員長)も、高山病の治療薬として、「軽症ではダイアモックス、中程度ではダイアモックスとデキサメサゾン、脳浮腫では多量のデキサメサゾン、肺水腫ではニフェジピン」を、それぞれ挙げ、ラシックスについては治療薬として挙げることさえありませんでした。なお、デキサメサゾン(商品名デカドロンなど)はステロイド薬(副腎皮質ホルモン薬)で、浮腫を軽くするなどの効果があります。ニフェジピン(商品名アダラートなど)は降圧薬で、肺水腫を改善することができます。1980年にすでにピーター・ハケット氏は、高所順応がうまくいかず水分を摂取できない脱水症の患者にラシックスを投与することは病状をかえって悪化させてしまうことになると、警鐘を鳴らしています。
 このようにラシックスは弊害が多い薬で、肺水腫や脳浮腫などのはっきりした障害がある場合に、医師が救急薬として使用する場合があるという程度のものです。専門外の方が、検査や輸液ができないような環境で使う性質の薬ではありません。つまり、ダイアモックスのように高山病の予防薬として使用するのは不適切であり、ダイアモックスの代わりにはならないと言えます。

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