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公益社団法人日本山岳会

効果のある体力トレーニングをしていますか? 718号

効果のある体力トレーニングをしていますか?

山本 正嘉

 安全で快適な登山をするために、普段から体力トレーニングをしている方は多いと思います。しかし、トレーニングをしていることと、それが実際の登山に役立っているか、ということは別問題です。この問題について、約7000人の登山者へのアンケート調査をもとに検証してみたところ、ちょっと心配なデータが出てきました。
 このアンケートの回答者のうち、全体の7割以上の人はトレーニングをしていると答えていました。その種目は、1位がウオーキング、2位が階段昇降で、それぞれ8割と3割の人が実施していました。登山は歩く運動ですし、坂道を上り下りするので、一見合理的なトレーニングをしている人が多いようにも見えます。
 ところが、これらのトレーニングが山での身体トラブルを防げているのかについて統計解析をしたところ、その効果は小さいという結果が出ました。山でのトラブルを多い順にあげてみると「筋肉痛」「下りで脚がガクガクになる」「膝の痛み」「登りで心肺が苦しい」・・・となりますが、これらのいずれに対しても防止効果はあまり見られなかったのです。
 何がいけないのでしょうか?またどうすればよいのでしょうか?予想も交えてですが、私が考えた答えは以下のようなものです。
 ウオーキング:登山は荷物を背負って坂道を上り下りしますが、ウオーキングではもっぱら空身で平地を歩きます。このため、脚力や心肺能力へのトレーニング効果は不十分なのです。改善策としては、できるだけ坂道や階段を取り入れたウオーキングをすることだと思います。
 階段昇降:登山によく似た運動をしているのに山で効果が出てこないのは、おそらく駅やビルの階段を数回上り下りしただけで満足している人が多いからでしょう。公共施設の階段は1段が約16cmです。これをもとに計算すると、駅の階段の標高差はわずか5~6mにしかなりませんので、数回上り下りするだけでは「焼け石に水」です。改善策は、最低20分間以上は行う、あるいは上り下りとも標高差にして100m以上は行うことだと思います。
 どんなトレーニングでもやらないよりはずっとましです。しかし、すでにトレーニングを励行している人は、改めてそのやり方を見直してみるのも悪くはないと思います。たとえば登山の場面をイメージしながら、「このトレーニングは登山のどの場面でどう役立つのか?」と考えながら行うと、思わぬ発見もあると思います。

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