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公益社団法人日本山岳会

子供は高所に弱いか 722号

子供は高所に弱いか

上小牧 憲寛

 昨年、標高3600mのラサに妻と2歳の娘を伴って旅行する機会がありました。事前に、旅行社の方から、2歳の子供がラサへ行くことを懸念されました。妻は4800mのモンブランに登ったことがあり、私は7500mのムスターグアタや6000mのコングデに登ったことがありますが、娘は2000m位までしか登ったことがありませんでした。私は迷ったのですが、具合が悪くなったら帰国すれば良いと考え、連れて行きました。最高5000mまで登りましたが、なんと、滞在中の動脈血酸素飽和度(SpO2)は、娘が常に父母よりも高かったのでした。
 子供の急性高山病については様々な報告があります。SpO2も急性高山病の発症率も大人と変わらないという報告もあれば、SpO2は大人より低く、発症率は高いという意見もあります。また、乳幼児で低酸素による呼吸抑制がみられたとの報告もあります。研究によって結論が異なる原因のひとつは、調査対象の人数が比較的少ないことでしょう。中には、私の娘のようなケースもあるのです。つまり、大人同様個体差があるということです。
 では、子供を高所に同伴する場合、どのようなことに注意すれば良いのでしょうか。
 まず第一に、親が高所障害にかからないこと。親の具合が悪いと、子供の観察を充分行うことが出来なくなるからです。
 第二に幼児は体調不良をうまく訴えることが出来ません。不機嫌、食欲不振、遊ばなくなる、不眠、頭痛などの症状に気付いたら低地に下りることです。子供用の急性高山病スコアも提唱されています。
 第三に小児は体表面積/体重比が大きいため低温による体温喪失が激しいので、寒い高所では保温に努めて下さい。
 以上の注意事項を守れば、子供同伴で高所へ行ってもかまわないと考えられます。最終的な責任は親にあることはいうまでもありませんが。
 くわしいことを調べたい方は、次の資料をご覧ください。

1. Wu TY. Children on the Tibetan plateau. ISMM Newsletter. 1994;10(2):5-6
2. Moraga FA, et al. Acute mountain sickness in tourists with children at Lake Chungara (4400 m) in northern Chile. Wilderness Environ Med. 2002 Spring;13(1):31-35
3. Yaron M, et al. Physiologic response to moderate altitude exposure among infants and young children. High Alt Med Biol. 2003 Spring;4(1):53-59
4. Kohlendorfer U, et al. Living at high altitude and sudden infant death syndrome. Arch. Dis. Child. 1998;79:506-509

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