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公益社団法人日本山岳会

アナフィラキシーとエピペン 724号

アナフィラキシーとエピペン

野口いづみ

山でハチに刺されて死亡したというニュースを時折、耳にします。犠牲者で多いのは山林の作業者で、不運な登山者や遠足の小学生も含まれています。これは、アナフィラキシーショックというアレルギー反応によるものです。刺されて一度目はショックを起こさずに、体内に抗体ができます。抗体ができてから刺されると、重症なアレルギー反応であるアナフィラキシーショックを起こします。

アナフィラキシーショックは稀ですが、生命のリスクの高いものです。血圧は低下し、脈は弱くなり、ショック状態になり、気道は浮腫を生じて呼吸が困難になります。動物や植物のたんぱく質を中心として、食物や薬など様々なものが原因になります。食べ物では蕎麦やピーナッツによるものが有名です。私は薬によるアナフィラキシーショックの3例に遭遇した経験がありますが、幸い、3例とも数時間以内に回復しました。

アナフィラキシーショックにはエピネフリンが奏効します。エピネフリンは、血圧を上げ、心拍数を増加させ、気管支を拡張させる作用があり、アナフィラキシーショックで起こる症状を改善させます。

最近、「エピペン」という、エピネフリンキットが入手できるようになりました。「エピペン」はペン型の容器にエピネフリン2mlが充填されているものです。安全キャップをはずして先端を太ももに押し付けると、針が押し出されて、エピネフリン0.3mg(小児では0.15mg)が筋肉内に注射できるという仕組みです。

「エピペン」は一般の方にも容易に使うことができ、医師に相談すると自費で入手できます。欠点として、使用期限が12~16カ月と短い点と、1万5千~2万円程度と高額な点があります。しかし、山中で他に手立てがない時には他に変えがたいアイテムといえ、特に、ハチに刺されたことがある登山者には必携と考えられます。

余談ですが、山からの帰りに乗車したタクシーの運転手から聞いた話にこのようなものがありました。彼は以前は浴びるように酒を飲んでいたそうですが、1年前にハチに刺されてショックを起し、28日間、生死の間をさまよった後、ばったりと酒が飲めなくなったそうです。生体内でどのような変化が起こったのか、医学的に利用できないかなど興味が持たれるし、ハチに刺された方が良さそうな面々も思い浮かぶことです。

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