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公益社団法人日本山岳会

登山では抗酸化サプリメントを摂りましょう 725号

登山では抗酸化サプリメントを摂りましょう

大野 秀樹

10年以上前の本会報598号で、「高所登山にはビタミン E の服用を」と題したコラムを書かせていただきました。それから、高所に滞在するだけで酸化ストレスが高まるという報告が次々となされています。酸素が少ない所での活性酸素発生の亢進は、一見矛盾している現象のようですが、間違いないようです。登山は、それに活性酸素の発生を亢進させる運動が加わるので、酸化ストレスの程度はより一層高まります。登山ではありませんが、高所トレーニングで体調を崩し、バルセロナオリンピック(1992年)で女子マラソン・小鴨由水選手が敗れたのは、高所の酸化ストレスによる肝機能障害が原因だった、と推測されています。高所での酸化ストレス亢進の原因として、1)低酸素による白血球の増加と活発化(白血球は、自身で活性酸素を発生させて殺菌効果を示します)、2)エネルギー代謝の亢進(最近、高所滞在が肥満治療に応用されています)、3)紫外線量の増加(高度3,000 m で約50%増えます)、4)昼夜の温度差の増大、5)全身の虚血?再灌流(標高の高低、すなわち濃い酸素と薄い酸素を繰り返します)、6)食事の質の低下や摂取量の減少、などが考えられます。これらに運動が加味されるのですが、特に下山は筋肉に最も酸化ストレスによるダメージを与える伸長性収縮(エクセントリック収縮)ですので、登山は宿命的に活性酸素の害を受ける、と言っても過言ではありません。

高度を増すにつれて、活性酸素の影響は飛躍的に高まります(特に、高度約 4,000 m を境として。しかし、小鴨選手がトレーニングを行った 2?3,000 m の高さでも酸化ストレスは明らかに亢進します)。さらに、年齢を重ねるにつれて抗酸化能力が低下し、酸化ストレスの害を受けやすくなります。つまり、高齢者の高所登山は、酸化ストレスの立場からは要注意です。山で食事から十分な抗酸化物質を補うことは困難ですので、サプリメントによる補給を推奨します。活性酸素のまっ先のターゲットは脂質ですので、脂溶性ビタミンの E を 100 mg、強い抗酸化能を有する茶カテキンを 600 mg、ビタミン E の作用をサポートするビタミン C を 1,000 mg が、標準的な1例です。登山中に加えて、その前・後1週間、毎日摂取してください。これらは、高い安全性を有しています。ただし、ビタミン C 単独摂取は、伸長性収縮の害をさらに助長することがありますので、お勧めいたしません。

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