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公益社団法人日本山岳会

山地の虫刺され対策 735号

山地の虫刺され対策

秦 和寿

山では予期せぬ虫刺されに遭遇することがある。山へ行く前から病害昆虫類の情報をえておけばパニックにならないで済む。丹沢でのこと女性の登山シャツが径10cm2ほど血液で汚れている。ヤマビルである。ヤマビルに吸着されても痛くも痒くもなんともないので、本人はわからず他人からの指摘で気づきあわてる。山での害虫情報を頭に入れておく必要がある。

ここでは四季の害虫カレンダーを記す。4月~5月にかけ低山では、顔の前、特に目の附近に小さな黒い虫がまとわりつく。手で追い払っても執拗にくる。実に不快だ。この種類はメマトイというコバエの1種で、涙を舐めにくるのである。少し高度をあげると、今度はブユである。4月~10月まで発生する。頭の附近を10匹以上が飛びまわる。実にやっかいである。ブユは蚊の様に吸血するのでなく、まず皮膚を口器で噛み血液が出たところで舐めるのである。都会人はブユの噛傷の経験が少ないので、赤く腫れあがるのが特徴だ。数日間アレルギー反応で苦しむ。ブユが異常に多い場合、クマなどの野生動物いる場合もある。この時期、北海道などではヤブカが一斉に襲ってくることがある。同じ時期、スズメバチとマダニが問題となる。地中の巣に振動を与えると、スズメバチの襲撃をうけることがある。身体を低く避けることが賢明だ。万一刺されたら、水で良く洗い冷やす。さらに虫刺され用の軟膏を塗布する。アンモニア類でなく、ステロイド含有の虫刺され軟膏を持参することが必要だろう。マダニも実に厄介である。藪歩きをすると寄生されることがある。しっかりと吸着されるとむしりとっても口器が皮膚に残る。無理やり取らずベンジン等をぬりゆっくりと取り除くことになる。外科的処置だと大きく皮膚を除去する。マダニが媒介するライム病は国内では病原性が弱く問題とならないが、日本紅斑熱を起こすリケッチア症は散発しているので、大きな紅斑が皮膚にでたときは治療が必要だ。山里では春と秋に恙虫病の発生も知られる。山の柴刈や山菜取りでダニの1種であるツツガムシに寄生され感染がおきる。刺口と発熱が特徴だ。蛇毒ではマムシが問題である。噛まれたら早急に医師の治療を受けることにつきる。自分で思い込みの切開などしてはいけない。冒頭のヤマビルは発生地域が限定される。忌避剤や塩を使用しているが、多数生息している場合、完全に防御することは不可能だ。

防虫対策は、帽子、長袖、長ズボン等の着衣と虫刺され軟膏及び忌避剤等が欠かせない。単なる山歩きでなく、自然保護など山林で藪の中に入るときは、しっかりした害虫対策が望まれる。防虫対策をすることによりパニックにならないで済む。

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