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公益社団法人日本山岳会

微小の吸血昆虫ヌカカの被害と防御                    秦 和寿(医療委員会)

深山や渓流歩きをする人はブユに襲われた経験があると思う。ところが、微小でしつこく飛び回り、人を刺すヌカカのことはあまり知られていない。吸血性昆虫ヌカカは発赤と激しい痒みなどの人体被害を及ぼす。虫から被害を受けたとき、種名がわからないと不安になりパニックともなる。ヌカカのことを頭のすみにでも入れておけば、あわてないで対処できると思う。

ヌカカは漢字で書けば糠蚊、糠子(ヌカゴ)あるいは浮塵子(フジンシ)だ。地方名も多く、尾瀬奥の福島県側登山口、桧枝岐はヌカドオシ、甲州の丹波山村ではムクリと言う。「ムクリ、コクリ、鬼が来る」という古い言葉(広辞苑)がある。ムクリは蒙古、コクリは高句麗で約740年前の元寇を伝え、この場合はどうにもならない虫害に由来する。英名はbiting midgeで蚊、蚋(ぶよ)やヌカカを一括りにしているようだ。

 

吸血昆虫ヌカカの生態と防御

形状/大きさ:成虫は1~2mm程度、糠のように細かいが、翅をよくみると褐色の斑点がある。幼虫は水生。

種類:国内に約50種 生息場所は種類により山地や渓流、磯辺など異なる。

被害:被害は朝と夕の無風時に多く、皮膚を齧り血を舐める。吸血は雌のみ。刺傷部位の発赤と激しい痛痒が数日間続くが、感染症は媒介しない。発生は種類にもよるが一過性でもある。

人を刺す主な加害種

シナノヌカカ  北海道から中部山岳地帯などの高地に分布。本種のタイプ、標本は上高地で1957年に採取されたもので

         ある。発生時期は6月~9月。          

・ミヤマヌカカ     西日本で6~9月に人を激しく襲う。       

ニワトリヌカカ ニワトリを吸血し人にも来る平地で6月~9月。 

・イソヌカカ   海沿いの汽水域に生息。磯で人を吸血。 

防御 基本は着衣、着帽。顔周りは手拭いで被い防ぐ。顔面用の防虫網などを使う人もいる。忌避剤(成分ディートあるいはイカリジン)の塗布。

被害後の処置は市販の虫刺され軟膏(抗ヒスタミン+副腎皮質ホルモン含有)の塗布。

               

図1 ヌカカ                                                      写真1 蚊柱を横切った時に多数のヌカカに刺された痕(写真提供 野口いづみ)

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