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公益社団法人日本山岳会

マダニの被害を防ぐ      医療委員会   秦 和寿

近年、山地でマダニが増加しています。ニホンジカなど野生動物の増殖などと深い関連があります。また山地では植林された杉や檜の大規模伐採も影響を及ぼします。同地は再び広葉樹などの苗が植林されています。陽のあたる跡地は草原様となり、シカだけでなくノウサギ類も多発しています。これらから哺乳動物に寄生するマダニも増加します。伐採地を歩く登山者はお分かりの事でしょう。

東京・景信山周辺でマダニの調査をしたので概要を報告し、併せて防除法を記します。

調査場所: 東京・景信山周辺の林道の草叢1km 調査地点の高度約400m

期  日: 令和4年4月23日

調査方法: マダニ採取の定法{旗ずり法}白色ネル布1m×1m 林縁の草類上を白布で引きずり、付着したマダニをサンプル管に収納。

マダニの捕獲状況:種類 タカサゴキララマダニ1匹成虫 体長5.5mmキチマダニ類    33匹成虫   体長 1mm

結  論: タカサゴキララマダニは大型のマダニで、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)などを媒介します。このウイルスを保有しているのは数千匹に1匹程度なので、人に寄生したからといって全て感染するわけではありません。静岡以西は注意を要します。               

山でのマダニ防止法:低山はハイカーも多く、山道を歩いているぶんにはマダニの寄生はほとんどありません。ところが、草叢に座ったり、撮影、植物や野鳥観察でヤブの中に入ると付着の恐れがあります。寄生例が多いのは沢登り後の藪漕です。

予防方法: 長袖・長ズボン・帽子・スパッツ着用で皮膚を露出させない。ヤブの中へ長時間入ったら風呂で腹部や腿等身体を点検します。

寄生を認めた場合:無理やり引っ張ると口器の先端部(口下片)が皮膚内に残り腫瘤(肉芽)などを起こす場合があります。マダニを確認したらワセリンを虫に隙間なく塗り、覆います。呼吸をできなくさせて自ら離れるのを期待します。それでも取れなかったら皮膚科を受診します。発熱や皮膚に大きな紅斑がでたときは治療を要します。なお、マダニの採集にあたり、高尾の森の松川征夫氏(日本山岳会)に調査に協力をえた。

 

(写真1)採集したマダニ 左上に大きなタカサゴキララマダニ、下方に複数のキチマダニ類 

(写真2)沢から帰宅後に頭皮にマダニが付着しているのを発見し、医療機関で摘出した(写真提供 野口いづみ)

委員会

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