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公益社団法人日本山岳会

健康長寿のための山登り1:運動習慣の作り方 齋藤 繁 第855号

健康長寿のための山登り1:運動習慣の作り方

齋藤 繁

「山登り」が健康増進、特に健康長寿に有効だという記述をよく目にします。私の在住する群馬県周辺の山々でも多くの中高年観光客、登山者が汗を流しながら坂道を登り、健康増進活動に励んでいます。下山の後の温泉も健康に良さそうです。

高血圧や心臓病、糖尿病の予防や治療として定期的に運動することが勧められていて、血圧が低下し、善玉コレステロールの増加や、中性脂肪の低下など健康に良い効果が得られるとされています。そして数ある運動の中でも、きれいな景色を眺めながら体を動かす「登山」や「ハイキング」は健康増進にとても有効な運動と捉えられています。特に、筋肉での栄養や酸素の消費が高まる坂道の登りでは心肺機能への負荷が増大し、こうした運動を無理のない範囲で継続することにより循環器系や筋骨格系、代謝内分泌系の機能が強化され健康長寿に繋がることが期待されます。

しかしどの程度の運動の頻度、負荷量がよいのかは誰しも迷うところです。ある時思い立って熱心に始めたものの、2ヶ月後に腰痛が悪化してやめてしまった、というような話は珍しくありません。また、時々歩くのでは効果が期待できないことから、毎日、2日に1回などのペースで長期に継続できる運動量に調節する必要があります。そうすると郊外の山の麓に住んでいる人以外は、「山」だけにこだわることなく、街中での定常的な歩行習慣と「山登り」を上手に組み合わせることが現実的になります。例えば、月曜日から金曜日は町内で毎日2から4kmの速歩、週末は郊外の山で5時間程度のハイキング、といったパターンが生活習慣病予防や健康増進には理想的と言えるでしょう。「日常の健康管理として食生活改善に努め、併せて運動の習慣をつける」ということを基本として、その上に、週末のお楽しみ運動、あるいはプチチャレンジとして、段階的に身体的負荷の大きい登山に挑戦していくことで、健康増進型登山者として大成できるのではないでしょうか。

 <参考図書:上記内容の詳細は以下の書籍をご参照下さい>

1)齋藤 繁 著 「病気に負けない健康登山:ドクターが勧める賢い登山術」(ヤマケイ山学選書)山と渓谷社 2010

2)齋藤 繁 著 「体の力」が登山を変える ここまで伸ばせる健康能力YS006 (ヤマケイ新書) 山と渓谷社 2014

写真1:山登りやハイキングは,健康長寿に有効

写真2:定期的な運動は血圧が低下し,善玉コレステロールの増加,中性脂肪の低下をきたす.

委員会

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