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公益社団法人日本山岳会

下山後の筋肉痛とアミノ酸の効果 浜口欣一 第863号

下山後の筋肉痛とアミノ酸の効果

浜口欣一

筋肉痛とは運動に伴って生じる筋肉の痛みで,運動が終わった後,数時間から数日までの間に起こる筋肉痛を,一般に筋肉痛と言います.登山後に経験しますが,普段使わない筋肉を使いすぎた場合に起こります.

筋肉痛のメカニズムはよくわかっていません.以前は,骨格筋のエネルギー源であるグルコースが分解され,ATP(エネルギーの貯蔵・供給・運搬を仲介している物質)を取り出す際に生じる乳酸が骨格筋に蓄積するためと言われていました.しかし現在は,普段使わない筋肉を使ったり,同じ筋肉を使いすぎると,筋線維や周囲の結合組織が傷つき,これを修復するために白血球を中心とした血液成分が集まることで「炎症」が起き,ブラジキニンなどの刺激物質が生産され,筋膜(筋肉を包んでいる膜)が刺激されて痛みが起こると言われています(イラスト).つまり筋肉痛とは,傷ついた筋線維が修復する過程で炎症が起き,生成された刺激物質が筋膜を刺激して起こるということです.

筋肉の収縮運動には,伸びながら力を発揮する遠心性収縮(伸張性収縮)(階段を下りる),縮みながら力を発揮する近心性収縮(短縮性収縮)(階段を上がる),伸縮なく力を発揮する等尺性収縮(腕相撲)に分けられます.登山は,遠心性収縮と近心性収縮が主体です.特に筋肉痛になりやすいのが遠心性収縮です.筋肉を伸ばすときの方が筋線維への負荷が大きくなるために損傷が起こりやすく,修復にも時間がかかるからです.野口いづみ氏は富士山を駆け下りた時にクレアチンキナーゼが3倍以上に激増していた経験があるとのことです.下る時は意識して穏やかな動作で筋肉への負担軽減を心がけるようにしましょう.

筋肉痛の予防には,日常の筋力アップトレーニングが重要です.筋肉の傷害を少なくするために,登山前の十分な準備運動とストレッチで骨格筋を動きやすい状態にすることや,下肢を冷やさないことも有効です.また,アミノ酸は筋肉の成分で,たんぱく質の合成を促進し,分解を抑制する作用があります.筋肉の損傷を防ぎ,筋肉痛を軽減させる効果も期待できます.筆者は,アミノ酸製剤を服用した結果,思いのほか筋肉痛が軽減した経験があります.下山後の筋肉痛を軽減させたい場合に,登山前,登山中,下山後にアミノ酸製剤を摂取することが勧められます.

イラスト:第一三共ヘルスケア・からだの症状・筋肉痛から

委員会

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