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公益社団法人日本山岳会

探索山行報告 2006年6月 「富士山の植生を探る」

探索山行 「富士山の植生を探る」
2006年(平成18) 7月15日~16日
地域:5合目から富士風穴、小御岳神社からお中道を西に
宿泊:忍野

講師:石井誠治(森林インストラクター、樹木医)「若い山・富士山の成立と植生の変遷、分布」
5合目から富士風穴まで歩いて探索。また富士山5合目小御岳神社からお中道を西に辿って植物の様子を観察を行った。
参加者49名 報告:山735(末廣担)

■探索山行

「富士山の植生を探る」

(平成18年7月15~16日)

 標題の探索山行を7月15~16日(日)に実施した。参加人員49名のうち当山岳会会員は28名、会員外が21名であった。
 新宿西口からの貸切りバスの運行は3連休の初日で約2時間渋滞したが、今回の講師 である当会会員・森林インストラクター・樹木医の石井誠治氏による車窓から見える樹木や地形の解説、参加者の自己紹介などで楽しく時間が過ぎた。

 5合目の小御岳神社では、富士山が4層の火山で成り立っていること、足元の岩が約10万年前の小御岳火山の一部であることに感じ入りながら、そのカラマツの林で昼食後、約標高2,400mの森林限界を縫うお中道を西にたどって植物の様子を観察した。

 お中道はカラマツ、ダケカンバ、ミヤマハンノキなど、養分に乏しく、水分も少ない環境の厳しい場所に根をはれる樹木の限界である。ここから上は高山帯であり、荒涼とした火山荒原をオンタデが、乏しい水分の縄張り争いの結果、まるで畑に植えられたような間隔で、点々と頂上に向って生え進んでいる様子を観察した。その遺骸が積もり、僅かの土壌が出来たところにカラマツ、ミヤマハンノキなどの幼樹が生えているが、それが成長して成木になるのは、火山礫の移動や劣悪な気候条件のためかなりの困難を伴うだろう。地面に蹲った老カラマツや東側にしか枝のつかない風衝木にこの辺りの冬の西風の強さを思い、積雪で押し曲げられたダケカンバの姿を見た後、御庭では側火山の噴火口に目を見張り、精進湖方面に向って多くの側火山が点々と連なる景色からはプレートの押し合いによる富士火山の活動のメカニズムを理解した。

 ここから3合目までの針葉樹林を歩く予定は時間不足のため変更し、奥庭を訪れただけでバスで直接山梨県環境科学研究所に至り、所員から富士山の成立、動・植物の種類や分布、環境問題についての説明を受けた。忍野の宿舎では、夕食後も石井講師を囲んで熱心な質疑応答が楽しく続いた。

 二日目は大雨の中バスで奥庭まで登り、雨が止んだところで、3合目までの亜高山帯でシラビソとコメツガの林を観察した。

 コケに覆われた林床が暗く見えるほど針葉樹が茂った地域では、森が強風を防ぎ日影を与え、コケが水分を保持する安定した関係を、また親樹が倒れてできたギャップでは、光が射して世代交代が進む様子を観察した。

 3合目からは精進口登山道を下り、植生の垂直分布を観察した。針葉樹林があっという間にブナやミズナラなどの広葉樹林に変化し、靑木ケ原樹海付近では突然、樹林の中にヒノキの群落が出現したのには驚かされた。最後に富士風穴を見学して帰途に着いた。

(末廣担)
山735-2006/8月号

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