メニュー

公益社団法人日本山岳会

探索山行報告 1986年7月 「木曽駒氷河地形探索」

◆探索山行 「木曽駒氷河地形探索」
1986年(昭和61)   7月12-13日
地域:木曽駒
コース:駒ケ温泉―千畳敷カール-木曽駒―前岳カール
宿泊:

講師:有井琢磨(大正大)「千畳敷カール」
参加者26名 報告:山496(中村純二)

報告

氷河地形探索山行

科学研究委員会

 中央アルプスの千畳敷カールや大関カールは、わが国に見られるウルム期氷河の残した典型的な氷河地形の一つである。その調査研究に永年携わってこられた大正大学有井琢磨教授に講師をお願いして、7月12日(土)、13日(日)の2日間。千畳敷ロッジを足場に探索山行を行なうことになり、26名が集った。

 生憎の梅雨で、終始ガスと雨と風に見舞われたが、上松から登って来る会員や、数時間前現地に着いて遊歩道の傍にモレーンを確かめようとする会員など様々であった。

 定刻16時からスライドを用いての講演が始まり、その気になって観察すればモレーンの丘を識別したり、削痕のある石を見つけることかできるとの説明に、一同、明日はこの目で氷河地形を確かめようとの期待に胸をふくらませた。また食堂に掲げられた大きなパノラマ写真によって、千畳敷カールや極楽平カールの臨場感溢れる説明もなされた。

 夕食後は、偶々昨年当地を訪れた大井会員から、スライドを用いて雲の説明と、石井会員(気象庁)持参の高層天気㈲による予報の解説とが行なわれたが、夜が更けるにつれ予報通り、雷を伴う集中豪雨の様相を呈してきた。

 13日は6時起床、6時半朝食、しかし相変らず雨は強く、風も加わってケーブルは一時ストップになった。やがてケーブルの山麓駅であるしらび平からのバス道路に落石が出、僅かにマイクロバスとジープか通れるだけだから、登山者は全員下山して欲しい、とのアナウンスがなされ、強風雨の中、宝剣小屋や駒頂上小屋からの登山者も続々とロッジに集って来た。

 ケーブルの運行再開とともに、私どもも下山させられたが、その間、雨中短時間ではあったが、現地についてモレーンの解説を聞き、また瞬間的とはいえ、ガスが晴れて宝剣や千畳敷カールの全容を観察できたのは幸せであった。

 講師の話によると、しらび平には左右両側から削られ、水平に置いた三角柱の両斜面が45度近くの斜度をもっモレーンの丘があるとのことだったので、ケーブルを下車して雨中その見学に出かけた。ちょうど岩が雨に濡れ、削痕の検出にも絶好の条件であったが、しらび平に三方から流れ落ちる小沢がすベて増水し、連続、瀧となって水しぶきを上げつつ豪々と流れ落ちる様は、幾条もの白布がはためいているようで、中々の壮観であった。

 ジープとマイクロバスの連絡で桧尾平に出、駒ヶ根に着くと未だ時間的に余裕があったので、三々五々手打そばを賞味したり、比叡山と同じ標高にある名刹光前寺を訪れ、ヒカリゴケや幽遠な杉の巨木を探勝したりして帰途についた。何時かもう一度天気のいい時節にまた訪れ、氷河地形を実地に確かめて見たいとの想いを抱きながら。

参加者 有井琢磨、石井恵美子、大井正一、奥野道治、小林碧、斉藤かつら、里見清子、沢井政信、高遠宏、高橋詞、富田郁夫、中垣淑子、中村あや、中村純二、松丸秀夫、丸茂キクエ、宮前淑子、他9名 

(中村純二)
山496 (1986/10月号)

委員会

pagetop