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公益社団法人日本山岳会

講演会報告 「中央構造線に沿う塩の道を探る」 2003年5月

講演会「中央構造線に沿う塩の道を探る」
2003年(平成15) 5月15日

山岳会ルーム

講師:稲垣敏彦(秋葉道・塩の道研究会代表)
報告:山698(福山美知子)


報告

 日本全国に名残を留めている塩の道であるが、本州の中部を南北に走る糸魚川・静岡構造線に沿う道のうち、昨年は北側の千国街道、続いて今年は南側の秋葉街道を中心とした探索山行を企画し、その予備学習会を5月15日、ルームで開催した。講師の稲垣敏彦・塩の道研究会代表は、秋葉道南端の静岡県相良から糸魚川に至る、全長350㎞を、掛川歩こう会の方々と共に、すでに4回踏破された方である。

 古い道は、町道や県道、国道開発のためズタズタにされている。そのかつての道を地図と磁石を手に、探し、辿り、繋いで歩かれた体験から、講演は具体的な事例に富んでいた。例えば、牛馬の通った道には、必ずオオバコ、牛馬の好むコマクサが生えており、道に沿ってない所には生えていない事。これは人の草鞋や牛馬の足に付いて種子の運ばれた道があった証である。最初は峰道であったろうが、峰道ばかりでは水場がない。現実に古道は水際には下りず、峰にも近づかず、水場が所々に現れる山の中腹についていることなど、生活に不可欠な塩の道、物産の交易路ならではの様態を興味深く伺った。

 時代と共に道は発展する。面白いことに、現在、峰道、人馬の道、荷車の道(江戸)、車道(昭和)、天竜川沿いの国道と、五本の道が見られる地域もある。ごく一部を除き昔の道がほぼ復元できたようであり、5年前に立札、「秋葉道・塩の道」を438枚も建てられた。ついで静岡新聞社から出版された「塩の道ウオーキング」には、2万5千分の1地図上に、静岡県境を北に越えて南信濃に至る約130㎞の行程が記入されている。猪や野猿出没のこと、杉林では山蛭に注意など、実際的な助言も頂いた。

 この道は、かつて修験者や信仰厚き人々が火防の霊場秋葉山を目指した街道でもある。数々の史跡もあり、今になお素朴な祭が残っているなど、民族学的にも面白い道であるが、今年南側を歩くことで、北側との比較も出来るというもの。北には牛方宿、南は馬宿、これは牛の方が急坂に強いということか、興味あるテーマの見出せる道ではある。昨年の井上講師のお話と併せて、聴講者一同、今に生きる塩の道という思いを強くしたのであった。

                                       山698(福山美知子)

委員会

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