■フォーラム「登山を楽しくする科学II」
2010年(平成22) 3月22日
飯田橋・仕事センター
1「低体温症の生理学」塩田純一(医療委員長)
2「カミナリの新理論」芳野赳夫(電気通信大学名誉教授)
3「温泉の自然学」福岡孝昭(立正大地球環境科学部)
4「森林テラピー入門学」平野裕也(森林テラピスト)
参加者140名 報告:山779(米倉久邦)
報告
フォーラム 「登山を楽しくする科学(Ⅱ)」が3月22日に飯田橋の仕事センターで開催され、一般も含め約140人が参加した。4テーマに各講師が、それぞれ映像を駆使しての講演であった。
最初は塩田純一医療委員長の「低体温症の生理学」である。「低体温症 から凍死するというのは、体の中心温度が30度以下になって死に至る」というところから説き起こし、ふるえなどの症状、早めの対策や防ぐ方法などを自分のヒマラヤ体験も交えて具体的に解説した。
2番目は、芳野赳夫科学委員(電気通信大学名誉教授)が登壇。「カミナリの新理論」と題して、今までの常識を覆す避雷姿勢を説明した。体内に電流を流さないために、両足をそろえてしゃがみ、閃光と大音響から守るため眼を閉じ耳をふさぐ。一点接地の新理論だ。従来の体を伏せて金属を身体から離すという方法は役に立たないという話に、聴衆は感心して聞き入っていた。
3番目は福岡孝昭委員(立正大地球環境科学部)による「温泉の自然学」である。地球最初の温泉は40億年前の海だと聞いてびっくり。どうして温泉ができるのかを、マグマや地殻の構造から説明した。馴染みのある火山性温泉の他にも、深層地下水や化石海水があり、さらに造成温泉やニセ温泉と話を展開した。
最後のテーマは、平野裕也委員(森林テラピスト)の「森林テラピー入門学」。まだ耳慣れない森林セラピーという言葉の意味を丁寧に解説。 森林浴が心身にいいことは知られているが、最近、その効果について科学的に測定され、療法として確立しつつあるという。信濃町のセラピー基地をモデルに、森林療法を会場で模擬体験してもらう工夫がよかった。
フォーラム終了後、初めて参加者へのアンケートを実施した。回答は参加者の8割に当たる106名で、満足度のたかい内容であったことをうかがわせるものであった。詳細は全体的に「大変良かった」55㌫、「良かった」23㌫でテーマ別では「大変良かった」とする回答が「低体温症」91㌫、「カミナリ」93㌫で登山の安心・安全に強い関心があることが裏付けられた。またこれから「取り上げて欲しいテーマ」については、気象、読図、技術、安全など幅広い要望 が寄せられた。来年のフォーラムに生かしていく方針だ。
(米倉久邦)
山779-2010/4
予稿集 目次
フォーラム開催にあたって 科学委員会委員長 米倉久邦
講演1 「低体温症の生理学」 塩田純一
講演2 「カミナリの新理論」 芳野赳夫
講演3 「温泉の自然学」 福岡孝昭
講演4 「森林テラピー入門学」 平野裕也
演者のプロフィル
2010年3月22日発行 A4-ページ 残部僅少 頒価¥500-
講演要旨