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公益社団法人日本山岳会

探索山行報告 2013年6月 「霧ケ峰に黒曜石の産地と歴史を訪ねる」

探索山行 「霧ケ峰に黒曜石の産地と歴史を訪ねる」
2013年(平成25年) 6月22日-23日
地域:霧ケ峰
コース:黒曜石研究センター-黒曜石ミュージアム-和田峠-(泊)-物見岩-八島が原湿原-鷲ヶ峰
宿泊:ヒュッテ・ジャベル

隅田研究員(明治大学黒曜石研究センター)
村田学芸員(黒曜石体験ミュージアム)
高橋保夫(ヒュッテ・ジャベルオーナー)「草原のつづく山」

参加者42名 報告:山819(福岡孝昭)

6月22日、23日の2日間にわたって恒例の科学委員会主催の探索山行が行なわれた。参加者は42名。

今回の目的は、石器の原石・黒曜石の産地である霧ヶ峰を訪ね、黒曜石はどのように生まれ、どのようにして石器に加工され、流通したのかを理解するとともに、歴史を秘めた草山「霧ヶ峰」を探索することであった。
22日は前日までの雨がぴたりとやんだ。バスは晴天の下、新宿駅西口工学院大学前を予定より少し早目に出発。交通渋滞もほとんどなく、昼前に霧ヶ峰北麓の長野県長和町鷹山の、明治大学黒耀石研究センターに到着。

 隅田研究員より、研究センターの設立の趣旨と、黒曜石についての解説を聴いた。黒曜石は、火山のマグマが流紋岩溶岩として噴出固化したガラス質の岩石であること。考古遺跡で発掘された黒曜石石器の原石の産地推定法(主に化学組成による)の説明があった。参加者からは活発な質問も出た。隣接の草地で昼食の後、町立「黒耀石体験ミユージアム」へ。

 村田学芸員による名調子の鷹山地区の黒曜石の産状(含採掘法)と石器の作製法、世界の黒曜石産地の展示についての解説を得る。その後、30分ほどの登高で星糞峠遺跡(縄文時代の黒曜石原石採掘跡)へ。遺跡の現状と今後の整備計画の説明を受ける。

 遺跡見学の後、バスで男女倉集落に湧き出す「黒耀石の水」で喉を潤す。中山道和田宿の「ふれあいの湯」で温泉につかり、史跡「和田峠」へ。旧和田峠スキー場下にバスを停め、旧中山道を20分ほど歩いて史跡へ。峠は日本の中央分水嶺であり、佐久と諏訪を結ぶ重要な街道、旧中山道にある。御嶽講の人々の通過地で初めて御嶽山が見える場所でもあり、かつては「遥拝所」もあったことが分かる。峠からはスキー場跡のゲレンデを下り、バスヘ。この夜の宿、スイス風山小屋「ヒユッテ・ジャヴェル」に到着。50年ぶりのジャヴェル訪問に感慨深い参加者も。

 夕食はビールで乾杯し、スタート。オーナー夫人他スタッフ手作りの夕食を平らげる。夕食後は、薪ストーブのある談話室でオーナー高橋保夫氏レクチャー「草原のつづく山」に耳を傾ける。草山「霧ヶ峰」の由来と歴史、鎌倉時代の流鏑馬等、ヒュッテ・ジャヴェルの50年の話など……引き込まれた。最後に山の歌を皆で歌い、盛り上がって就寝となった。

 翌23日、探索山行恒例のラジオ体操だ。朝食後、高橋オーナーの先導で物見岩~八島ヶ原湿原~鷲ヶ峰コースを歩き、草山霧ヶ峰を堪能した。天気も良く、遠くに槍や穂高が見え、一同大感激。物見岩からは、男女倉山頂上付近の山腹に見られる寒冷地地形を遠望。花の時期は過ぎてはいたが、「ズミ(コナシ)」とヱゾノコリンゴ」の見分け方などの勉強もした。

 八島ヶ原湿原は、高層湿原の南限である。湿原のボーリング調査から明らかになった過去1万年のこの地域の環境変化の説明は、前日、バス車内で小畦委員作成のプリントが配布され解説された。昼前に鷲ヶ峰(標高797・9m)に登頂。麓に広がる新緑、レングツツジと、山頂付近のヤマツツジのオレンジは実に美しい。八島ヶ原湿原付近でおいしい弁当に舌鼓。

 ジャヴェル入り□で高橋オーナーと別れを惜しみつつ、帰路へ。立石展望台で糸魚川~静岡構造線の活動で生じた諏訪湖の全景を鳥瞰したのち、諏訪湖岸の千人風呂「片倉館」(地域住民の厚生と女工さんへのサービスとして1928年に設立された歴史的温泉施設)の深い大きな浴槽で山行の汗を流した。交通渋滞により多少遅れたものの、無事に新宿帰着。参加者からは大満足という評価を得て解散となった。

 最後に、すべてが順調に進んだのは多くの方にご協力いただいた結果であり、記して感謝申し上げます。 

      (福岡孝昭)

山819-2013/8月号

委員会

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