火山とは
噴火するもしくはその可能性のある山が火山であり、山頂や山側面から開いた火口から轟音とともに噴煙やマグマを噴出することを噴火といいます。
一方、日本山岳会刊行の新日本山岳誌では次のように定義している
「火山は、溶岩や火砕流などの火山噴出物が積み重なってつくられた山である。大量の火砕物を放出して地下に空洞ができ、そこが陥没したカルデラ、火山性地震を伴いつつ地下浅所で固まったマグマが上昇することにより隆起した有珠新山のような潜在ドーム、火山ガスの噴出やマグマが水と接触して地下浅所で爆発が起こり、地表が吹き飛ばされてできたマール なども火山に含められる。」
しかしこの現象にはさまざまなタイプがあり、各地の火山はみな それぞれ異なった姿や特徴があります。
それぞれの根源的なメカニズムから火山を分類し、特徴を観ながら、火山の基本的な全体像をつかんでみよう。
マグマの正体
地球の体積の83%、質量では68%を占めるマントルは常に遷移運動を行い、地殻にさまざまな変動をもたらしている。つまり地球は生きている。そのマントル運動の中で地下深く生み出された物をマグマであると推測されている。
地球は核、マントル、地殻で構成され、核は地球の中心から直径約3500キロの液体の球体と考えられており、それを包み込むように約2800キロの厚みのマントルがある。さらに地殻がマントルを包んでいるが、厚みは陸地で30~40キロ、海底で6~10キロぐらいといわれる。
分かり易いイメージで言うと、鶏卵の構造を思い浮かべてみてほしい
卵の黄身の部分が核、白身がマントル、そして殻が地殻 という訳だ。
地殻近くの100キロぐらいのマントル層をプレート(上部マントル)といい、長い年月をかけてゆっくり動いている。このプレートが裂けたり、プレート同士がぶつかり合い片方が沈み込むことで、プレート内の溶けやすい成分が溶融したものがマグマだと考える説もある。
マグマが地殻内で一定量溜まるとマグマ溜りを造り、それが地表に現れると噴火という現象になる
太平洋プレート、フィリピン海プレート、北米プレート、ユーラシアプレート がひしめきあう日本列島は地震とともに火山の生まれやすい特徴をもった典型的な地形ということになる。
活火山と非火山
活火山には次のような定義がある
活火山は過去1万年以内に活動した火山であり
Aランク:過去数年から数十年に1回の割合で噴火
Bランク:過去100年に数回以上の噴火
Cランク:過去100年に噴火なし
Aランクの活火山
十勝岳、樽前山、有珠山、渡島駒ケ岳、浅間山、伊豆大島、三宅島、伊豆鳥島、阿蘇山、雲仙岳、桜島、薩摩硫黄岳、諏訪之瀬島
これに対し、約50万年前以前に噴出した日本の火山は、溶岩や火砕流などの火山噴出物(火山岩類)が、削剥、侵食されつくされ、火山活動による地形が全く残存していない。これらの山々は非火山性の山地と同じく大半が削剥・侵食された斜面からなっているので、外見上も火山とはいえない。
この中間にある1万年から50万年前に活動していたとされる火山を単に火山といい、噴火の可能性が無いとされている。
噴火の種類
マグマ噴火 | マグマが直接地上に放出される噴火のことをマグマ噴火という 地下からマグマが上昇していくうちに、マグマに含まれていた水分を主成分とした揮発成分が急激な減圧により発泡しマグマを細かく破砕する。その結果マグマは多孔質の破片となりガスとともに火口から噴出す マグマの成分のちがいにより次のいくつかに分類される |
|
■ハワイ式 | 静穏型噴火ともいう。流動性の大きい溶岩が静かに火口から流下する噴火。ハワイのマウナロア・キラウエアなどの火山にみられる。ガスが少ない。日本では三宅島や伊豆大島がこのタイプ | |
■ストロンボリ式 | 10~15分ごとに小爆発し、そのたびに火口から流動性の少ない溶岩を噴出する。 火口やその直下にあるマグマの中で大きな泡が特徴的に破裂することによって起ると推測されている。シシリー諸島のストロンボリ火山が名称の由来。日本では阿蘇山や諏訪之瀬島の噴火で観測された |
|
■ブルカノ式 | 溶岩の粘性が大きいため表面で固結し、爆発のみで溶岩を噴出しないもの。 火口の出口付近に上昇してきたマグマが、しばらくその付近で滞留すると冷えて粘りけを増し(固くなり)、栓ととなって火山ガスの火口を塞いでしまいます。すると栓となったマグマの下にガスが溜り、最終的には栓を吹き飛ばしてしまいます。吹き飛ばされる栓は固くなったマグマなので、緻密な噴石や火山灰を多く撒き散らす。イタリア・ブルカノ火山が由来 駒ケ岳、浅間山などがこの例で日本でよく見られる |
|
■ブリニー式 | 大規模噴火で見られ、最初に大爆発し大量のマグマが一気に噴出。の粘結性の多い溶岩を押し出し、火砕流が四方八方に流れ下る。西インド諸島のプリーニ火山がこの例 | |
■混合式噴火 | 溶岩の噴出と爆発とを交互に繰り返すもので、安山岩質、玄武岩質の火山に多い。桜島、樽前山などはこの例 | |
水蒸気(噴火)爆発 | 地下水や湖水などが地下から接近してくるマグマの熱で加熱され水蒸気となって急激に膨張し、ついには周囲の岩石を吹き飛ばす。古い岩石の破片の土砂が、黒っぽいジェットとなって繰り返し放出される。 また非常に細かい火山灰が放出され、周辺に堆積する。細かい火山灰は水はけが悪いため、直後に降った雨水が地表に流れて谷に集中しやすく、火山灰や土砂が一緒に流れる泥流や土石流が発生する |
|
マグマ水蒸気噴火 | マグマ噴火と水蒸気爆発の中間型をいう |
噴火時の噴出物
火砕流 | 高温 | 呼吸困難、火傷 |
噴煙柱が崩れたり、火山ドームが崩壊することにより発生。主成分は火山ガスで火山礫や火山灰を含む。火砕流は山体に沿って高速で下降。時速100キロを超えることもある。またその周辺では高温ガスである火砕サージも発生する | ||
溶岩流 | 高温 | 火傷 |
溶融したマグマが地表に噴出したもの。高温の液体状でその温度は800~1200度ある。粘度が低く重力によって火口から山麓に向かって流下するがその速度は最大でも時速30キロ程度。時間経過とともに放熱し固形物に変化するが、固体化したものも溶岩と呼ばれる | ||
火山ガス(ガスのみの時は噴火といわない。⇒噴気) | ||
火山の噴火による被害で最も長期的な影響を及ぼすのが火山ガスによるもの。人体に多大な悪影響を及ぼす。
近づくことができるまで数十年かかる場合があります 参考;■火山ガス シンポジウム 1998年(平成10) 9月19日(科学技術省主催) |
||
■水蒸気 (H2O) | 無色、無臭、無毒 | |
火山ガスの95%~99%は水蒸気です。 ほかに、二酸化炭素、一酸化炭素、二酸化硫黄、硫化水素、塩素、フッ素、水素、などを含みます。 水蒸気と、窒素、水素を除いたほかの物質は生物に悪影響を与える化合物です。 |
||
■二酸化炭素 (CO2) | 無色、無臭、 | 高濃度で酸欠 |
中毒による死亡事故が多発。空気中の濃度が3~4%を越えると頭痛・めまい・吐き気を催し、7%を越えると数分で意識を失い死にいたる。 | ||
■二酸化硫黄 (SO2) | 無色、刺激臭 | 有毒(喘息患者は発作) |
■硫化水素 (H2S) | 無色、卵の腐った臭い | 有毒、神経損傷、呼吸困難 |
空気より重いため火山地帯の谷筋や窪地に溜まりやすい | ||
噴石(火砕物) | ||
マグマが地表に噴出した後、冷却されて細かく破砕されたもの。学術上は「火山砕屑物」という。大きさにより呼称が異なる | ||
■火山岩塊 | マグマ起源と非マグマ起源 φ64mm以上 |
打撲(骨折など)、マグマ起源の時火傷 |
■火山礫 | マグマ起源と非マグマ起源 φ2以上~64mm未満 |
打撲(骨折など)、マグマ起源の時火傷 |
■火山灰 | マグマ起源と非マグマ起源 φ2mm未満 |
呼吸困難、視界不良 |
火山と地形
成層火山(複成火山)Stratified volcano | 富士山 | |
中心火道から溶岩や火山砕屑物を繰り返し噴火することで形成される円錐形の火山。円錐火山は世界の火山の60%以上あるとされ、日本でも最も多く観られる。活動初期は静穏で玄武岩溶を噴出。中・後期は安山岩質に変わり、活動は爆発的になる。 コニーデ | ||
楯状火山 | ハワイ・キラウエア火山 | |
騎士の楯を伏せたような形の穏やかな山体を示す火山。粘性の非常に小さい玄武岩溶岩で形成。 ハワイやアイスランドなどの海洋島が典型例。八幡平にはアスピーテラインが走っているが、偽アスピーテ火山である。月山も霧が峰高原も外観はアスピーテ様を呈するが、楯状火山ではない。 アスピーテ |
||
カルデラ | 阿蘇山 | |
火砕流などを一度に大量に噴火することで形成される火口状の凹地。 通常の火口より大きく、直径が2kmより大きなもの。カルデラ内に水をたたえたものがカルデラ湖である。 阿蘇山は世界的にも規模の大きいカルデラ火山。また、水深423mの田沢湖、360mの支笏湖など深い湖はカルデラ湖であることが多く、一般に貧栄養湖で透明度が高い。摩周湖は世界一、二位を競う透明度だ。 |
||
溶岩円頂丘 | 溶岩ドーム:雲仙・普賢岳 | |
粘性の大きな溶岩からなる釣鐘状火山のこと。鐘状火山とも呼ばれる。地表下まで上昇したマグマがドーム状地形を形づくる場合と、溶岩となって地表に露出している場合がある。 トロイデ | ||
火山砕屑丘 | ||
降下火砕物が形成した、円錐形ないし類似の地形。火山灰丘(桜島の鍋山)、スコリヤ丘(伊豆の大室山)など ホマーテ | ||
火山岩尖 | 昭和新山 | |
粘性の高い溶岩が地表に押し出されて生じた岩塔。 ベロニーテ | ||
マール | 秋田県・目潟 | |
爆発的な噴火によって生じた円形火口のうち、顕著な環状丘をもたないもの。 | ||
火砕流台地 | シラス台地 | |
爆裂火口 | 登別温泉・地獄谷 | |
火山噴出物が少なく火口だけが形成した火山 | ||
単成火山 | ||
一回の噴火で形成された火山 |