越後支部選定古道「佐渡・石花越え」を歩く
調査日;令和6年10月20日(日)
調査者;後藤支部長、佐久間古道プロジェクトチームリーダー、藤井会員(佐渡市在住)、伊豆野会員(佐渡市在住)、玉木事務局長、会員外~伊豆野会員長男、塚本佐渡トレッキング協議会会長、猪股(佐渡市在住)
報告者;玉木事務局長
石花(いしげ)越えは、佐渡市外海府地区の石花から大佐渡山脈を越えて、内海府地区の両津、国仲に至る生活道である。いにしえのころ外海府の婦人達が、多くの海産物を背負って峠を越え、両津、国仲の集落を回り、米、穀物と物々交換した道であった。この道は石花から大佐渡山脈の縦走路までは登山道として地形図に掲載されているが、縦走路からアオネバに至る間は記載されていない。
佐渡市在住の伊豆野会員が幾度も現地調査を行い、地形を研究し刈り払いを行って調査用に登山道を復元した古道である。急斜面や沢の渡渉地点にはロープが展張され、我々のために整備をしていただいた。そのご労苦にはただ感謝しかない。整備に費やされた時間は数年にわたるものと推察する。ここに感謝の気持ちを表し調査登山を報告する。
令和6年10月20日(日)午前8時40分、佐渡汽 船両津港駐車場に集合。本土から後藤支部長、佐久間さんがカーフェリーで到着。玉木は前泊して佐渡のメンバーと二人を出迎える。支部会員は支部長以下5名、会員以外では伊豆野さんの長男で30代の若者、佐渡トレッキング協議会の会長さんで山岳ガイドでもある塚本さん(女性)、両津地区にあるアウトドアショップ勤務の猪股さん(女性)の3名から同行していただいた。
伊豆野さん手配のジャンボタクシーで、両津~国仲~相川~外海府~石花登山口へと向かう。両津港を出発時には大佐渡山脈に太い虹がかかり、今日の登山に花を添えているようだ。相川から外海部の沿岸線は昨日からの不安定な気圧配置により強風が吹き、白波の間に波の花が漂っていて、大気中には潮が浮遊している。
10:15石花登山口(標高374m)、タクシーはここまで入る。登山口周辺は風はないものの肌寒さを感じる。伊豆野さんを先頭に調査登山の開始となる。登り初めは急登が続くがやがて斜度が緩くなる。登山口周辺からしばらくの間は刈り払いがされていて歩きやすい。皆口々に歩きやすく気持ちいいねと感想をもらすと、藤井さんが今日のために刈り払いをしてくれていたことを話してくれた。なんともありがたいことだ。登山道の脇には鉄柱が等間隔に立ち並んでいる。かつて牛を放牧していた当時の牛の転落防止柵の残骸である。現在では牛は放牧されていなくいたるところ藪だらけである。
11:00平城畑(三等三角点松坂山653m)に到着。樹木がなく草原状の開けた台地に出る。眺望が開け金北山からドンデン高原に至る稜線が見渡せ、外海府の海原が見渡せる。この周辺は一面ノコンギクが覆いつくし、ところどころナデシコの淡い紫が映えている。昔、生活物資を背負った人々もここで一休みしたことだろう。休憩後登山再開。しばらく平坦の道が続き11:30カツラボ池(690m) に出る。池畔に丈の高いナナカマドが既に葉を落とし頭頂部のみ紅葉している。
11:50追分(700m)に着く。行く手正面に峠が見えてくる。後ろを振り向くと松倉山(四等三角点803.8m)と高塚山(三等三角点北立島746.8m) に繋がる登山口に至る。登山道の脇に川内用水路の痕跡が高塚山中腹まで伸びている。現在は水路との機能を果たしていないが、こんな山中から用水を引く構想や水の確保のための維持管理は相当難渋したことだろう。
12:15カレー川を渡りカレー清水に着く。この地名の由来は、かつてこの場所を往来した人々が、この清水で米を炊いて乾燥させたものを古くは「御粮(みかれい)」といい、行商の婦人達が携帯した乾燥米を、この清水で戻して食したことからカレー清水と呼ばれたのだろうかと藤井さんは推測する。カレーライスを食べる場所ではないようだ。大佐渡山脈縦走路まで20分の道標を見る。最後の登りになる。急登が続くが20分を信じて歩くと一気に視界が開ける。縦走路に出る本当に20分で縦走路に着いた。
12:35縦走路分岐。ここで昼食にする。大佐渡の分水嶺で外海府と内海府の海を見渡す。左右に海を見られる登山道は島の山岳地ならでは景観である。大佐渡の縦断は何度も体験しているが、横断は始めてである。
12:55内海府側に向けて下山開始。ここからは地形図に記載のない古道となる。古道の入り口は刈り払われていない。あえて藪を残したのは一般登山者が迷い込まないための伊豆野さんの配慮だ。藪を抜けると古道の踏破となる。木々の伐採、藪の刈り払いは伊豆野さんが行ってくれていて歩きやすい。初めは山腹をトラバース気味に巻き一気の下りになる。急斜面には真新しいロープが張られ安全を確保してくれている。ありがたい。いくつかの沢を渡渉するが、ここにもロープが展張され難なく歩くことができる。昨日の雨で沢水は増水していて、絵になる沢が見られ、沢登りの意欲が湧いてくる。Ⅴ字地形の急斜面を下り、沢を渡る。この道は昔の生活道路なのだ。多くの荷物を背負った老若男女が歩いた道なのだと思うとさぞ難儀したことだろうと思わずにいられない。ようやく従来のアオネバ登山道に出る。
14:05「落合」の道標のあるポイントに着き休憩する。塚本さんからポッポ焼きや饅頭をいただく。甘いものが美味しい。猪股さんから写真を撮ってもらう。猪股さんは一眼レフカメラの他にコンパクトカメラも携行して撮影しており、本格派のカメラウーマンを感じさせる。アオネバ登山道は流石に歩きやすい。春には多くの花々が咲き誇る登山道で、花の時期は大勢の登山者が行き交う。Ⅴ字谷のウトウ地形を縫うように歩く場所もある。
14:30アオネバ登山道入口に到着。石花越え古道の完登である。外海府から大佐渡を越えて内海府側に無事踏破することができた。これも地元の藤井さん、伊豆野さんの事前調査と刈り払いのお陰である。私はただ歩くだけのお殿様登山であった。地元の方々に感謝。本当にありがとうございました。登山口には行きに乗ったタクシーが迎えに来てくれており待たずして両津港まで運んでくれた。これも伊豆野さんの手配だ。
14:50両津港到着。ここで佐渡の方々にお礼を述べ握手をして別れる。
16:05発のカーフェリーに乗船。船内は観光客でごった返し通路に寝そべっている人もいて難民船の様な混みようである。佐渡の山並みに沈む夕日を見ながら佐渡を後にし、佐渡の山人のおもてなしに感謝し、また佐渡に来たいと思い、素晴らしい佐渡の山旅を終えた。