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公益社団法人日本山岳会

木元康晴著『IT時代の山岳遭難』山と渓谷社2020年

スマホやGPSなどのIT機器は安全登山の強力な武器であると共に、デメリットもあるので注意が必要だ。

①SNSなどで知り合った見ず知らずの人と登山。⇒リーダーシップ・メンバーシップが育たない。登山中に空中分解。散り散りバラバラ。遭難しても相手の名前も知らない。(ニックネームしか知らない。)
②情報の真偽が分かり難い。⇒黒部の下の廊下などに初心者が殺到。
③HPやブログ、FBやインスタ、ヤマレコ・YAMAPなどでより注目を浴びたいがために、過激な行動にエスカレートしやすい。⇒人に見せるための登山(承認欲求・人から認められたい、”イイネ!”をいっぱい欲しい)⇒冬富士を実況中継して滑落死亡。
④GPSやスマホなどの機器を過信して、行動がより大胆になる。(リスクの目標水準が上がる)⇒北鎌のような岩稜や、吹雪の穂高へ。そしてバックアップとしての紙地図・コンパスや時計などのアナログ装備を軽視。⇒電池切れや経験不足で遭難。
⑤登山の動機として、現実逃避や機械文明・IT社会におけるストレスの発散・解消を挙げる人も多いが、…とすれば、登山とITとは本来相性が悪いといえなくもない。欧米では自然の中では、時計さえ身に付けない人もいるというが?

 この本ではデメリットばかりを強調しているわけはなく、GPSアプリのヤマレコ・YAMAP・Geographica・スーパー地形などの使い勝手を紹介し、コンパスやココヘリなど今後のテクノロジーについても詳しく紹介している。要はメリット・デメリットを承知した上で、賢く利用するということだろうか。

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