学術講演会「かながわの山を知る」のご案内
日本山岳会神奈川支部
神奈川県の山は、その成り立ちやそれに伴う植生などで大きな特徴があります。また、最近では山岳信仰への関心も高まっています。そこで、神奈川県の山に関して、その特徴を学術的な視点から分かりやすく解説していただくとともに、現状の問題点の認識を共有することを目的として、下記のような講演会を実施します。
1. 日時:9月29日(日) 13:30~16:00 受付13時10分から
2. 場所:かながわ県民センター 2階ホール (横浜駅西口徒歩5分:下記URL参照)
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/u3x/cnt/f5681/access.html#tetsudou
3. 講演内容 (下記の講演概要を参照してください)
(1) 神奈川の山の生い立ち
平田 大二(神奈川県立生命の星・地球博物館元館長)
(2) 植物から見た丹沢、箱根、小仏山地
勝山 輝男(神奈川県立生命の星・地球博物館元学芸部長)
(3) 相模の山岳信仰と修験道
鈴木 正崇(慶應義塾大学名誉教授、日本山岳修験学会会長)
4. 参加費:無料
ただし、事前申し込みが必要
氏名を記して kana.sec.19@gmail.com に申し込んでください。
講 演 概 要
「神奈川の山の生い立ち」 平田 大二 (神奈川県立生命の星・地球博物館元館長)
「山」とはなんだろうか?国土地理院では山の定義はしていないが、辞典等からの引用として、山というのは周りに比べて地面が盛り上がって高くなっているところと紹介している。地形や地質に詳しいタモリさんではないが、坂があれば山があることになる。では、なぜ周囲よりも高くなるのだろうか。大地が地殻変動により隆起する、また火山活動により火山噴出物が積み重なれば高くなる。神奈川の山々も、そのような大地の営みで出来上がってきたものである。当たり前のように思われがちだが、山が、いつ、どのようにしてできたのかを確かめるのは実は簡単ではない。山の正体と歴史を解き明かす学問の一分野が、地質学であり地球科学である。
植物から見た丹沢、箱根、小仏山地 勝山 輝男 (生命の星・地球博物館 元学芸部長)
丹沢、箱根、富士山、伊豆にかけての地域は、サンショウバラ、ハコネコメツツジ、フジアザミなど、この地域に分布が限られた植物が数多くある。これらは、岩場、風衝地、崩壊地、林縁などに生えるものが多い。植物の種類相からみた県西の山地の特色を紹介する。1990年頃から丹沢ではニホンジカの採食圧により林床植物が衰退した。最近は、箱根や小仏山地でもニホンジカが増加しつつある。また、塔ヶ岳から蛭ヶ岳の稜線はかつてはうっそうとした樹林に被われていたが、オゾンなどの大気汚染の影響でブナが枯れ、どこも眺めの良い稜線になってしまった。植物から見た県西山地の異変についても考えたい。
相模の山岳信仰と修験道 鈴木 正崇 (慶應義塾大学名誉教授、日本山岳修験学会会長)
相模の人々にとって最も身近な信仰の山は秀麗な山容の大山で雨乞いで知られていた。かつては沢山の登拝講があって賑わい、浮世絵や名所図会に描かれて親しまれてきた。近年は日本遺産に登録され信仰習俗も一部復活している。相模には中世に遡る修験道の中心地があった。大山の北東にあって修験集落を山麓に形成した八菅山である。大山までの峯入り修行を明治5年まで継続してきた。山北では秋には踊りと歌を山上の神明社に奉納するお峯入りの祭りが行われ、修験道儀礼の芸能化とも言える。2022年にユネスコ無形文化遺産「風流踊」に登録された。伊豆・箱根も山岳信仰の中心地で、源氏の深い帰依を受けてきた。多様な展開を見せる相模の山岳信仰と修験道について検討を加えてみたい。