科学委員会の探索山行は、令和6年6月8日(土)~9日(日)、山梨県小菅村で開催され、松姫峠から山の神、山沢入りのヌタ、鶴寝山への登山及び登山道管理状況の見学、道の駅こすげ周辺での地方創生の取り組みに関する実地見学・意見交換等が行われた。
この探索山行は、令和5年12月23日に開催された科学委員会主催のフォーラム「登山を楽しくする科学(XIII)」で報告された「これでいいのか登山道‐登山道のあるべき姿と今後を考える-」を基に企画されたものである。
参加者は科学委員会から8名、JAC会員1名、一般参加者2名の計11名であった。
登山道案内及び地方創生活動を紹介する講師は、小菅村で活動されている(株)リトル・トリ-代表取締役の大野航輔氏に依頼した。
6月8日(土)、JR青梅駅に集合し、9時に(株)ボックスツアーの貸切バスで奥多摩湖を経由しで小菅村に向けて出発した。道駅駅こすげに到着後(10:35‐10:50)、直接道の駅こすげに集合した会員及び講師の大野氏と今後のスケジュール等を打ち合わせ
た。
原生林トレッキングが鶴寝山周辺の東京都の水源地で行われるためバスで松姫峠に行く(11:15)。武田信玄の娘である松姫の逃避行伝説が残る松姫峠からは、かろうじて富士山が確認できた。鶴寝山への巻き道を辿り、大山祇命を祀った「山の神」で休憩(1::55)となる。小菅村に降る尾根(現在は廃道で通行止めになっている古道)に、マウンテンバイクのコース設置を検討しているとのことである。鶴寝山の北側の巻き道は、ブナの巨木など広葉樹の自然林が残り、立派な木製の道標が設置され、良く整備された歩き易い登山道であった。「ブナ枯れ」や木々の説明などを聴きながら、また、野鳥の鳴き声や蝉の声に送られながら、フタリシズカが群生する静寂な道を歩く。目的地である「山沢入りのヌタ」で昼食(12:45‐1::10)となる。帰路は日向遊歩道を通り鶴寝山(標高1368m)山頂(13:50)を経由して、松姫峠に戻った(14:14)。バスで道の駅こすげに戻り、地方創生の中心となる「小菅の湯」を楽しんだ後、バスで小菅村の中心地近くの廣瀬屋旅館につく。
6月9日(日)、廣瀬屋旅館で大野氏の「多摩源流小菅村の地方創生への取り組み」に関する講演及び参加者との意見交換を行う(8:30‐10:10)。バスで道の駅こすげに移動(10:30)し、大野氏及び今日から参加した尾崎嘉洋氏の案内で、間伐材を利用した薪ボイラーの現状、タイニーハウスこすげ、フォレストアドベンチャーこすげの利用状況、源流の森再生PJ(土中環境改善)に関する詳細な説明、空間利用の試みとして木製バンクによるマウンテンバイクコース設置状況、木材加工場等を見学した。これらの地方創生の活動は「地域おこし協力隊」などの若者たちの活動の場となっている。道の駅こすげの源流レストランで石窯ピザの昼食(12:30‐13:00)。バスで「雨乞いの滝」に移動し、観光開発された沢沿いの遊歩道及び滝を見学(13:17‐13:30)。バスで箭弓神社に移動し、小菅養魚場(13:45)及び箭弓神社(13:57)を見学する。箭弓神社の鳥居の扁額は「箭弓三所大明神」と記され神仏習合の名残が見られる。傍らの説明板には小菅丹波の総社であり、疫病退散のための獅子舞が行われると記されていた。箭弓神社の横から史跡小菅城址天神山(14:05)に登ると、堀切や曲輪の跡が確認できる。また、小菅城は室町初期に武田家の家臣であった藤原朝臣小菅遠江守信景が築城したと記されている。破壊ヶ所と呼ばれる極めて急な石段を登ると山頂で、天神社と思われる小社を見学し、箭弓神社に戻る(14:31)。ここで小菅村での見学及び探索山行は全て終了したことから、小菅に戻る講師達、大月方面に戻る会員、バスで青梅駅に帰る会員と分かれる。バスは奥多摩湖経由で青梅駅に到着し、解散(16:04)となる。
小菅村における木材・間伐材及び山林の空間利用、登山道整備、古道活用など「地域おこし協力隊」と協力して地方創生が広範囲にわたり精力的に実施されている状況を確認することができ、貴重で有意義な探索山行であった。
松本敏夫記(2024.06.11)
原生林トレッキング「山沢入りのヌタ」にて
鶴寝山山頂にて