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公益社団法人日本山岳会

講演会報告 「同時登攀中の確保の科学」 1982年11月

1982年(昭和57)11月5日(金)
山岳会ルーム

中川和道(東大)
参加者:16名  報告:山451(中村純二)


報告

科学研究委員会第15回講演会 同時登攀中の確保の科学

昭和57年11月5日(金)
午後6時半~9時
山岳会ルームにて

 概要   同時登攀中に用いられる確保技術には、現在確実なものがまだ殆ど無い。ザイルを結びあってはいても、少なからぬ不安を抱いた体験をお持ちの方も多かろう。 本日は、同時登禁中の確保方法に関する最近の研究の現状を概観し、次に力学的に実用可能な確保方法はどのようなものであるかについて考える。

A、確保方法研究の現状 (詳細は雑誌「山と仲間」に連載中の講演者の所論参照のこと)
現在十種類以上の確保方法が提案・検討されているが、いまひとつ決定版と言い切れるものが無く、いわばそれらの全てが開発途上にあるといえる。これらの中では大阪府岳連方式(『岩と雪』57号および68号)が最も多くの試行実験の積み重ねを有し、その有効性も実地に把握しやすいので、とりあえず実行されることをお勧めしたい。

B、力学的解析 先ずいえることは固定確保によっては安全な確保はできないので、必ずランニングビレーの方法をとるべきだということである。次に力学の計算を行なうに当り、諸種の実験から、次の条件を満たすことが基本的に要請される。
①制動力は約100kr以下におさえること。
②体重は装備を含め約80kgとする。
③動摩擦係数は滑り易い装備の場合も考え、下限の0.3という値を使用すること。

 さて前述Aの約10種の確保方法につき、体で直接シーズ支点として用いたのちに体でショックを受け止める場合とに分けて考察しよう。 前者の場合、ザイルをピッケルと共に握り込むことにより、雪面方向に対し直角に約13kgの力がでる。しかし斜度が47度以上になると、雪面と確保者の体のなす角度が20度以下となって確保し難くなる。 したがって、この場合斜度47度付近が同時登攀可能な一応の限界となる。

 後者のピッケルを支点に用いる場合、ピッケルにかかる力の最大値は制動力の二倍程度になる。
この意味でピッケルが安定な中間支点として作用するよう、軟雪中では自分のトレールの底の雪が周囲より固いことを利用するなど、様々な工夫が必要である。

C、同時確保法の将来  同時登攀中の確保技術は、現在の登山技術体系全体の中でも未開拓であるため、この分野の技術開発が発展を遂げるためには、研究を行なっている人々相互の交流が必要である。同時に意味のある実験データの蓄積されることも重要である。この分野に興味をお持ちの方は、どうか講師にも連絡して情報の入手や交換に協力して頂きたい。

参加者  金坂一郎、神埼忠男、小谷邦彦、坂本正智、三宅清子、佐藤知恵子、久村俊幸、三谷英三、堀内章雄、前田文彦、梅野淑子、斎藤かつら、高橋詢、千葉重美、小西奎二、中村純二

(中村純二)
山451 (1983/1月号)

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