メニュー

公益社団法人日本山岳会

探索山行報告 1984年11月 「高ドッキョ紅葉探索」

◆探索山行 「高ドッキョ紅葉探索」
1984年(昭和59年度) 11月10-11日
コース:上徳間―樽峠―高ドッキョ-徳間
宿泊:上徳間・坂口荘

講師:近田文弘(静岡大)「樹木と紅葉、落葉、腐葉」
協力:沼津かもしか山岳会、加田勝利会員他
参加者33名 報告:山476(中村純二)

報告

高ドッキョ紅葉探索山行

科学研究委員会

 今年度の探索山行は「紅葉」を対象に、静岡大学の近田文弘助教授を講師に迎え、沼津かもしか山岳会の行届いたお世話の下に実施することになった。

 11月10日(土)15時20分富士駅には参加者全員が一人の遅刻もなく集合、マイクロバスで山梨県上徳間の坂口荘に向かった。
車中、近田先生から静岡県の植生についての説明を受ける。富士川の支流福士川にはいると、別稿講義(講義内容は下記に掲載)にあるように、今年は特に美しい紅葉が渓流を鮮やかに彩り歓声が上る。宿につくと、高橋科学研究委員会委員長の挨拶に引き続き、スライドを用いて近田先生の講義が行なわれた。7時から坂口荘の望月源吾翁の料理法説明つきでヤマメの刺身や塩焼、山菜料理や手打そばなど豪勢な料理と豊富なお酒で懇親会。二次会は夜半まで続いた。

 翌11日(日)は生憎の雨、しかし却って紅葉の色も鮮やかで趣もあるというので、予定通り高ドッキョに向かうことになった。傘をさしての樽峠への登りではサワガニが沢山這い出していて、かもしかの加田氏らは忽ち数十匹の収獲を上げる。樽峠付近に来るとコミネカエデ、コハウチワカエデ、ブナ、カナクギノキなど紅葉は最高潮である。 そしてこれはアントシアン系、これはキサントフィルまたはカロチン系、これが離層等と各自実地に講義を確かめ、質問できるというのは、学ぶ者にとっては最高の喜びであった。稜線を歩きながら実物に即してエゴノキ、イヌツゲの大木、あるいはウシコロシ、アカガシ、アマチャヅル、ヤマグルマ、リョウブ、コクサギなど近田先生からいろいろ面白い話を伺うこともできた。雨で滑り易い急坂を1134メートルの高ドッキョ頂上に登り着いたのは11時。幸いに雨も止み、先着の沼津かもしか会員による焚火か赤々と燃え、大鍋にはナメコと豆腐のたっぷりはいった心尽くしの味噌汁が湯気を立てていた。 缶入酒で乾杯、おにぎりの他、あんパン、コーヒー、果物、そして坂口荘差入れのきぴもちも出て、枝に突き刺して火にかざすなど、野趣満点であつた。食後には山の歌の独唱や合唱もあいつぎ、心ゆくまで山を楽しんだ。

 徳間への下降路は雨で滑り易いというので来た道を下山する。次第にガスもはれ、貫ケ岳や篠井山も姿を見せ、日が射すと紅葉の上に虹がかかっていた。予定通り、3時半にマイクロバスの待つ車道終点に到着、富士駅には5時に着いて解散となった。

 有志6名は更に車で沼津かもしか小屋に向かい、今日とれたサワガエの唐揚げや新鮮な刺身に舌つづみを打ちつつ、他のかもしか会員も交えて歓談の後、一泊した。

 近田先生と、予備調査その他万全の準備とお世話を頂いた沼津かもしか山岳会の皆様に改めて御礼申し上げ、報告に換えたい。

参加者  *近田文弘(講師)、加田勝利、湯山直文、金子誠一、*金子しげ子、仁王一成、平井泰、長谷川広司、庄司長生、佐藤隆男、*小川喜久、*武藤泰佐(以上かもしか山岳会員)岸栄、中垣淑子、久保孝一郎、菅野弘章、砂田定夫、山崎健、冨田郁夫、船木威志、中村あや、及川昭、*及川弓子、滝沢芳章、宮前淑子、赤松光、*根本大、*大野規子、中村純二、斎藤桂、梅野淑子、小西奎二、高橋詞
以上33名
*印は非会員、ただし近田先生並びにかもしか3名は近日中に入会の予定。

(中村純二)
山476 (1985/2月号


紅葉探索山行・講義要約

紅葉・落葉・腐葉

近 田 文 弘(静岡大、理・生物学教室)

 紅葉という言葉を辞書で引きますと、樹木の葉が晩秋の寒冷に逢う頃、葉緑素が変質する結果、緑色を失って黄褐色となり、また花青素が紅変して紅色となること(広辞苑)とあります。紅葉(もみじ)はまた紅葉(こうよう)とも、黄葉とも表現されます。山の樹々の緑が秋を迎えて、赤や黄に美しく粧おうことを言っているのです。

 私は南アルプスの植物を幾度か調査しておりますので、今回の話を南アルプスのもみじ観賞から始めさせて頂こうと思います。今年は台風もなく、また秋に入って冷たい日が続きましたので、南アルプスの紅葉は殊の外美しいようです。赤や橙色の葉はカエデ科の樹木に多く、文字通りの紅葉です。鮮やかな黄色はダンコウバイやカラマツなど、そしてクマの食糧として大切なドングリをつけるブナやミズナラは褐色のもみじです。中には葉の表面は赤いのに、裏面は緑色のままというマルバウッギのような変り者もあります。

 南アルプスの紅葉を少し遠くから眺めますと、飯豊連峰など北国の山々と違って緑色をしたツガやウラジロモミなど常緑の針葉樹と紅葉した樹々がモザイクのように混り合った様子をしています。北国の全山紅葉の方が良いという人もいますが、緑ともみじが綿織りなす南アルプスこそ、という人もあります。

 紅葉のメカニズムは、晩秋になって気温が低下すると、葉と枝の間の養分の通りが悪くなり、葉の緑色を作っていた葉緑素が分解されて、もとから葉には含まれていたけれども、葉緑素に被いかくされていた色素であるアントシアン(花青紫=赤色系)やキサントフィル(=黄色系)の色が現れることによるといわれます。

 花青素は、光合成によって葉に貯えられた糖分を成分のひとつとして作られる色素です。数日の間穏やかな晴天か続いた後、急に冷え込んだ時、紅葉が一段と美しくなるのは、晴天時に葉に糖分が多く合成されたことが原因となっているのです。

 紅葉という現象を葉が一時的に緑色でない別のものになるということで考えますと、冬のスギの葉の紅変や、春のカナメモチの紅変もそのひとつになります。冬に杉が紅葉することは案外気づかれていないかも知れません。

 さて、紅葉の次には、落葉がやってきます。落葉は、葉柄の基部に秋になると。“離層”という特別な組織ができて、この離層の所で葉は枝から離れて落ちるのです。私は、シダ植物で落葉を調べたことがあります。シダでは、(1)離層は全くできずに葉が腐って落ちるもの、(2)春のうちに葉柄に離層かできて、ここから落葉するもの、(3)秋に離層ができて落葉するもの、と三つの型があります。ペッファーという人は、樹木の仲間も広く調べて12の型があると述べてます。要は“離層”のでき具合で、色々様々な落葉かあるようです。

 緑の時を終え、紅の秋を飾ってハラハラと散りゆくカエデ類の葉もあります。枯葉が冬の寒風にカサコソと鳴りながらいつまでも枝に残っているコナラの葉もあります(この種では離層ができないのです)。また緑色のままで勝手気ままに落葉する不粋なヤマハンノキの葉もあります。葉だけでなく小枝も一緒に落してしまえというのは杉で、クスノキのあの大きな樹冠も小枝を落すことでバランスがとれているのです。

 さて、最後に落葉の行方を考えてみたいと思い

山476-1985/2月号

pagetop