2025フォーラム「登山を楽しくする科学(XV)」報告
科学委員会委員長 松本敏夫
日本山岳会・科学委員会主催によるフォーラム「登山を楽しくする科学(XV)」が、2025年11月22日(土)、13時から17時、立正大学品川キャンパス・ロータスホールで開催された。参加者は一般登山愛好家17名、日本山岳会会員17名、また科学委員会委員18名(その内1名は講師)及び講師2名で、参加者の総数は54名であった。司会は科学委員会の木曽雅昭事務局長が担当、科学委員会の松本敏夫委員長による開会の挨拶があった。
講演1では「山の名前を考える-修験道との係わりについて-」と題して、日本山岳修験学会及び日本山岳会の松本敏夫氏が修験道と山の名前との関係について報告した。また、雲取山や飛龍山、御 嶽山(みたけさん・おんたけさん)の名前の由来の解説があり、最後に埼玉県毛呂山町にある牛頭山(または午頭山)の山名の混乱に関する紹介があった。地元で呼ばれている「ごんずうさん」または「ごずさん」の山名は、牛頭山の表記が「牛」と「午」が混在している現状は毛呂山町でも理解している。山名の根拠となる古文書等の発見が待たれるところですが、身近な山の名前に興味を持つきっかけとなる事が期待される。
松本敏夫氏の講演
講演2では、「新しい登山形式の試みと将来ビジョン」と題して、南信州山岳文化伝統の会及び日本山岳会の大蔵喜福氏から斬新な報告がされた。だれでもが楽しめる「エコ登山」を目指して南アルプス南部・遠山郷を根拠地に、地域の活性化と観光登山の実践例が紹介された。「エコ登山」では「自然を学ぶ姿勢」を養ってほしいとの願いから、レンタルテントによる常設テント場、排泄物は携帯トイレによる持ち帰り、登山者の背負う荷物の軽減などにより、高齢者にも楽に登山ができることを可能とした。最終的にはビジターハウス、登山者の利便性の向上により、世界中からのインバウンド登山者、子供から高齢者を含む一般登山愛好家に、満足のいく登山を楽しんでもらうための登山基地構想が提示された。

大蔵喜福氏の講演
講演3では、「赤色立体地図 1枚で立体的に見える地形表現の活利用」と題して、立体赤色地図発明者でアジア航測株式会社フェローの千葉達朗氏から詳細な発明の経緯が報告された。富士山青木ヶ原の航空レーザ測量後の地形表現検討のなかで、方向依存性のない立体感を1枚の画像で実現する新しい表現法「赤色立体地図」を発案し、その興味深い応用事例が数多く紹介された。従来の地形可視化手法の問題点を改善し、尾根谷度を明度に、傾斜を彩度に対応させることで、陰影を用いずに地形の凸凹を表現することができ、尾根は明るく、谷は暗く、傾斜が大きいほど赤の彩度が強まる原理により、方向依存性のない安定した立体感が得られることを示した。その結果、樹木に覆われた青木ヶ原の火口列や側火山、古道・登山道の明瞭化、地殻変動の解析などに応用されている。今後は地形学・防災・考古学・教育などの多方面の応用が期待されている。
千葉達郎氏の講演
科学委員会ではフォーラム開催に際し、講師と会場に参加された皆さんとが有意義な意見交換がなされ、多様な登山の楽しみ方に関する理解をより深めることを目的としております。参加された皆様のご協力で成果があったものと考えております。最後に、最新の設備が整ったロータスホールを使用させて頂いた立正大学に感謝申し上げます。
◆予稿集
1.山の名前を考える-修験道との関わりについて-・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
日本山岳会・日本山岳修験学会 松本 敏夫
2.新しい登山形式の試みと将来ビジョン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
南信州山岳文化伝統の会・日本山岳会 大蔵 喜福
3. 赤色立体地図 1枚で立体的に見える地形表現の利用法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14
赤色立体地図発明者・アジア航測株式会社フェロー 千葉 達郎
2025年11月22日発行 A4ー23ページ
予稿集 (下記項目をクリックしてください)
フォーラム「登山を楽しくする科学(XV)」表紙
フォーラム「登山を楽しくする科学(XV)」目次、演題1,2,3、プロフィール、奥付(P3~23)
フォーラム「登山を楽しくする科学(XV)」裏表紙
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